面談同席で見えた、企業と本人の“すれ違い”の瞬間

面談の場で企業担当者と求職者が向き合う様子。両者の表情にすれ違いが見えるイラスト。
目次

はじめに:言葉は通じているのに、意図がすれ違う

就労支援者として企業面談に同席する機会は多くあります。面談の場は、企業と求職者が直接対話する貴重な時間であり、相互理解を深めるチャンスでもあります。

しかし、実際には「言葉は通じているのに、意図がすれ違っている」と感じる瞬間が少なくありません。
その“すれ違い”は、表情、沈黙、言葉の選び方、そして空気感に現れます。

今回は、私が面談同席で実際に目にした“すれ違い”の瞬間を通して、支援者としての気づきと対応策を共有します。

事例紹介:面談中に見えた“すれ違い”の構造

ケース1:企業の「即戦力期待」と本人の「成長意欲」

ある企業は「即戦力としてすぐに現場に入れる人材」を求めていました。一方、本人は「未経験でも挑戦したい」「育成してもらえる環境を探している」と考えていました。

企業側の発言本人の受け取り方
「うちは即戦力を求めています」「未経験の自分には難しいかも…」
「研修は最低限です」「成長の機会が少ないのでは?」

このように、企業の言葉が本人の不安を増幅させ、面談の空気が徐々に重くなっていきました。

ケース2:本人の「配慮希望」と企業の「自立重視」

精神障害を抱える方が「業務量やコミュニケーションに配慮してほしい」と希望した場面。企業側は「自立して働けるか」を重視しており、配慮=特別扱いと捉えてしまう傾向がありました。

  • 本人:「週5勤務は難しいかもしれません」
  • 企業:「それでは戦力にならないのでは?」
  • 支援者:「段階的な勤務開始で定着率が上がる事例もあります」

このような場面では、支援者が“翻訳者”として双方の意図を橋渡しする必要があります。

支援者の役割:すれ違いを“気づき”に変える

面談同席の意義とは

面談に同席する支援者の役割は、単なる付き添いではありません。以下のような機能を果たします。

支援者の役割具体的な行動
通訳・翻訳企業の言葉を本人に分かりやすく伝える/本人の意図を企業に補足する
空気調整緊張や沈黙を和らげる/話題の切り替えを促す
振り返り支援面談後に本人と内容を整理し、次のステップを明確にする

“すれ違い”をどう扱うか

支援員

実際にすれ違いがおきた場合、対処することが必要です。

  • 言語化:「今のやりとりで、少し認識のズレがあるように感じました」と客観的に伝える
  • 補足説明:「○○さんは、こういう意図でお話しされています」と補足する
  • 共通点の発見:「御社の○○という点と、本人の△△という希望は、実は近いかもしれません」

こうした対応により、すれ違いは“気づき”に変わり、面談の質が高まります。

まとめ:すれ違いは“ズレ”ではなく“余白”

面談同席で見える“すれ違い”は、決してネガティブなものではありません。むしろ、企業と本人がそれぞれの立場から真剣に向き合っている証です。その“余白”にこそ、支援者の介在価値があります。

支援者として意識したい3つの視点

  1. 言葉の裏にある“意図”を読む
  2. 本人の不安や希望を代弁する勇気を持つ
  3. 企業の立場も尊重し、共通点を探る

面談は“合否”を決める場ではなく、“関係性”を築く場です。すれ違いを恐れず、丁寧に向き合うことで、本人にとっても企業にとっても納得感のあるマッチングが実現します。

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