診断名だけでは分からない「困りごと」の本質とは

悩む男性と診断書、脳、疑問符が描かれた「困りごとの本質」に関するアイキャッチ画像

「〇〇という診断がついているから、こういう支援が必要ですね」など、現場でよく耳にする言葉です。


しかし、実際に支援をしていると、診断名だけでは見えてこない「困りごと」が数多く存在します。


本記事では、障害福祉の現場支援者としての視点から、診断名の限界と、本人の困りごとの本質に迫る支援のあり方について考察します。

目次

診断名が示すものと、その限界

診断名は「入り口」にすぎない

診断名は、医学的・心理学的な評価に基づいて付けられるものであり、支援の方向性を定めるうえでの重要な手がかりです。


しかし、診断名はあくまで「ラベル」であり、個々の生活の中で何に困っているかまでは示してくれません。

現場で感じるギャップ

例えば、同じ「自閉スペクトラム症」という診断名がついていても、ある人は「音への過敏さ」に困っており、別の人は「予定変更への不安」に苦しんでいます。


診断名だけで支援を組み立てると、こうした個別の困難が見落とされてしまうのです。

「困りごと」の本質を捉える視点

生活場面からの観察

支援者として最も重要なのは、診断名ではなく「生活の中で何が起きているか」を観察することです。
以下のような視点が有効です。

  • どの場面で困っているか(例:通勤、食事、対人関係)
  • 困りごとが起きる頻度やタイミング
  • 本人がどのように感じているか、どう対処しているか

本人の語りを引き出す

「何に困っているか」は、本人の言葉で語られることで初めて明確になります。


支援者は、安心して話せる関係性を築きながら、以下のような問いかけを通じて本音を引き出すことが求められます。

  • 「最近、しんどいと感じることはありますか?」
  • 「そのとき、どんな気持ちになりますか?」
  • 「どうすれば少し楽になりそうですか?」

診断名と困りごとの関係を整理する

支援員

私は普段精神障害や発達障害の方の支援を行っていますが、多くの困りごとを受けています。

以下の表は、診断名と実際の困りごとの例を整理したものです。


診断名が同じでも、困りごとの内容は大きく異なることが分かります。

スクロールできます
診断名実際の困りごと支援の方向性
ADHD時間管理が苦手で遅刻が多いスケジュールの視覚化、リマインダー活用
自閉スペクトラム症予定変更に強い不安を感じる事前予告、変更理由の説明、選択肢の提示
うつ病朝起きられず、生活リズムが乱れている小さな達成感の積み重ね、生活記録の支援

ADHDなどの発達障害の方はスケジュールが苦手なことも多いです。私が支援している中で活用している方法を以下に紹介しています。

支援者としての姿勢と実践

「診断名に縛られない」柔軟な支援

支援者は、診断名を参考にしつつも、それに縛られすぎない柔軟な姿勢が求められます。
本人の語りや生活場面からの情報をもとに、支援の内容をカスタマイズしていくことが重要です。

チームでの情報共有と視点の統一

支援者一人の視点では限界があります。
多職種チームでの情報共有を通じて、本人の困りごとを多角的に捉えることができます。

  • 支援会議での生活場面の報告
  • 本人の語りを共有する場の設定
  • 支援方針のすり合わせと見直し

1人での支援だと視野が狭くなるため、医療や相談支援、就労移行など複数の事業所と連携することで質の高い支援へ繋がる

「困りごと」に寄り添う支援が生む変化

本人の安心感と自己理解の促進

診断名ではなく「自分の困りごと」に焦点を当てた支援は、本人の安心感につながります。
「自分のことを分かってくれている」と感じることで、自己理解や自己肯定感が高まり、生活の質も向上します。

支援者自身の気づきと成長

困りごとの本質に向き合う支援は、支援者自身にも多くの気づきをもたらします。
「この人にとっての困りごととは何か?」という問いを持ち続けることで、支援の質が深まり、専門性も高まります。

まとめ:診断名の先にある「その人らしさ」へ

診断名は支援の出発点であり、決してゴールではありません。
その人が日々の生活の中で何に困っているのか、どんな思いを抱えているのか??そこに寄り添うことが、支援者としての本質的な役割です。

「診断名だけでは分からない困りごと」に目を向けることで、支援はより深く、より温かいものになります。


そして何より、本人が「自分らしく生きる」ための力となるのです。

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