支援現場において、一次障害への理解と対応はもちろん重要ですが、それ以上に見落とされがちなのが「二次障害」の存在です。
二次障害とは、もともとの障害特性に加えて、周囲の環境や関わり方によって生じる心理的・行動的な困難のことを指します。例えば、不登校、うつ症状、適応障害や対人関係の回避などがその一例です。
この記事では、支援員が現場で意識すべき「二次障害の予防」と「起きてしまった際の対応策」について、実践的な視点から解説します。
二次障害とは何か?
一次障害との違い
一次障害は、発達障害や身体障害など、医学的・生物学的に診断される障害です。
一方、二次障害はそれに付随して後天的に生じる心理的・社会的な困難です。
分類 | 特徴 | 例 |
---|---|---|
一次障害 | 先天的・診断可能 | 自閉スペクトラム症、ADHD、身体障害など |
二次障害 | 後天的・環境要因が影響 | 不登校、抑うつ、不安、自己否定、対人回避など |
二次障害が起きる背景

私が支援員として日々現場を見ている中で、二次障害が起きる背景の例を紹介します。
- 周囲の理解不足による否定的な関わり
- 失敗体験の積み重ねによる自己肯定感の低下
- 過度な期待やプレッシャー
- 安心できる居場所の欠如
合理的配慮がなく二次障害に発展したり、仕事に対する不安がたまることもあります。合理的配慮については以下の記事にまとめています。
支援員ができる「予防」の視点
1. 安心できる環境づくり
支援員として見てきた中で、二次障害の予防の第一歩は、「ここにいても大丈夫」と感じられる環境を整えることです。
- 視覚的手がかり(スケジュール、ルールの掲示)
- 静かなスペースの確保
- 過度な刺激を避ける工夫(照明、音など)
2. 否定しない関わり方
「できないこと」よりも「できること」に焦点を当てる関わりが重要です。
- 失敗しても責めない、肯定的なフィードバック
- 小さな成功体験を積ませる
- 「困っている」視点で行動を捉える



特に私が支援してきて感じたのは、発達障害でうまくいかないことから自己肯定感が下がり、他の人と比較して精神障害への二次障害に繋がっていることが多いです。
3. 支援員自身の理解と姿勢
支援員が障害特性や行動の背景を理解しているかどうかが、予防の質を左右します。
- 定期的な研修や学びの機会を持つ
- チームでの情報共有と振り返り
- 「その子らしさ」を尊重する姿勢
二次障害が起きてしまった時の対応策
1. 感情の受容と共感的対応
まずは相手の考えを受け止めることが最優先です。仕事でうまくいかなかった経験や、周りから言われたつらい言葉、退職になってしまった経緯など支援員に吐き出すことから信頼関係を作ります。
そして、信頼関係を作ることで、支援としても次のステップに進むことができます。
2. 専門機関との連携
支援員だけで抱え込まず、必要に応じて専門機関と連携することが重要です。
機関名 | 役割 |
---|---|
スクールカウンセラー | 心理的支援、保護者との連携 |
ハローワーク | 就職先や実習などの連携 |
医療機関 | 診断・治療・受診同行など |
3. 支援員自身のセルフケア
支援員が疲弊してしまうと、良質な支援は継続できません。
- 定期的な振り返りと感情の整理
- 同僚との相談・共有
- 必要に応じてスーパービジョンを受ける



支援員の立場になると、どうしても自分で解決しないといけないという責任感をもってしまいますよね



障害の方の支援をするうえで、支援員がうつ病になったり休職になることも少なくありません。そのため、一人で抱え込まず支援員自身のケアも大事です。
二次障害にならないための支援事例
私が福祉事業所で支援してきた中で、二次障害を生まないように支援してきた流れをステップで紹介します。
支援の流れ
今までの辛い経験や失敗経験等
障害名だけにとらわれず、どのような特性があるか考察
できる限り本人の言葉から引き出せるよう、課題を共に考える
スケジュールが苦手➡ツール使用、マルチタスクが苦手➡事前に配慮を申し出る等
最近では障害を「個性」と考えるようにもなってきていますが、発達障害やHSPなど特性を持った方は、まずは自身の特徴を知ったうえで働きやすい環境づくりや特性に対する対策を行うことでストレスも軽減されます。
まとめ:支援員が持つべき視点と姿勢
二次障害の予防と対応には、支援員の「見立て力」と「関わり方」が大きく影響します。大切なのは、目の前の行動だけで判断せず、その背景にある「困り感」や「感情」に寄り添うこと。そして、支援員自身も無理なく継続できる支援体制を整えることです。
支援は一人ではできません。本人を軸としながらも、医療や、支援者、専門機関が連携しながら、安心して過ごせる場をつくっていくことが、二次障害の予防と回復への第一歩です。