支援者として、相談者との信頼関係を築くことは最も重要な基盤です。特に、心理的な安全性が求められる支援の現場では、相手が「この人なら話しても大丈夫」と感じられる関係性が不可欠です。
本記事では、信頼関係構築の鍵となる「ラポール形成」と「アサーション技術」について、支援者視点で実践的に解説します。
ラポール形成とは?
ラポールの定義と重要性
ラポール(rapport)とは、フランス語で「関係」や「つながり」を意味し、心理学では「信頼と共感に基づく人間関係」を指します。支援者と相談者の間にラポールが形成されることで、相談者は安心して自己開示できるようになります。

私は日々精神障害の方や発達障害の方を支援していますが、ラポール形成の状態によって、こちらからの説明や相手からの相談も全く変わってきます。
ラポール形成がもたらす効果
- 相談者の不安や緊張が緩和される
- 本音や悩みを話しやすくなる
- 支援者の助言や提案が受け入れられやすくなる
- 支援の成果が高まりやすくなる
ラポール形成の具体的な方法
実際にラポール形成するためには以下の方法があります。
方法 | 具体歴 |
---|---|
ミラーリング | 相手の話し方や姿勢をさりげなく合わせる |
傾聴 | 相手の話を遮らず、うなずきや相づちで受け止める |
共感的理解 | 「それはつらかったですね」と感情に寄り添う |
自己開示 | 支援者自身の体験を適度に共有することで距離を縮める |
アサーション技術とは?
アサーションの定義
アサーション(assertion)とは、「自分も相手も大切にする自己表現」のことです。攻撃的でも受け身でもなく、率直かつ誠実に自分の気持ちや考えを伝える技術です。
アサーションの3つのタイプ
タイプ | 特徴 | 支援現場でのリスク |
---|---|---|
アグレッシブ(攻撃的) | 相手を支配しようとする | 相談者が萎縮し、信頼関係が崩れる |
ノン・アサーティブ(非主張的) | 自分の意見を言えない | 支援者としての役割が果たせない |
アサーティブ(自己主張的) | 自分も相手も尊重する | 信頼関係が深まり、支援が円滑になる |



もう少しイメージが湧くように教えてほしいです。



私の事業所では、ドラえもんを例えてよく説明しています。つまり、ジャイアンがアグレッシブ、のび太君がノン・アサーティブ、しずかちゃんがアサーティブという状態です。理想はしずかちゃんタイプと言われています。
支援者に求められるアサーションの実践
支援員は相手に寄り添ったり傾聴、共感で相談されやすくなります。ただ、家族や友人ではなく支援員という立場のため、伝えなければいけないことはしっかりと伝えなければいけません。そのため、以下のことも実践しましょう。
- 「私はこう感じています」と主語を自分にする
- 相手の立場や感情を尊重しながら伝える
- 断るときも丁寧に理由を添えて伝える
- 感謝や肯定の言葉を積極的に使う
ラポール形成とアサーションの相乗効果
信頼関係構築の流れ
ラポール形成とアサーションは、単独でも有効ですが、組み合わせることでより強力な信頼関係を築くことができます。
流れ
まずは相手の話をしっかり聞き、否定や助言よりも傾聴に重点をおく
理由も伝えながら、相手に分かりやすく説明する
伝えるタイミング、フォローする職員など工夫しながら再度信頼関係の構築を行う



どんなに相手のために言葉を選んでも傷つくことはあります。そのため、事業所内で役割分担を決め、「指摘する人」「相談を聞く人」「フォローする人」「雑談する人」などチーム支援することでよりラポール関係を築きやすくなります。
支援現場での活用例
例えば、キャリア支援の場面で「転職に不安を感じている」という相談者に対して、支援者が以下のように対応することで信頼関係が深まります。
- ラポール形成:「不安なお気持ち、よくわかります」
- アサーション:「私自身も転職経験がありますが、準備次第で安心して進められますよ」
- 再ラポール:「一緒に進めていきましょう。無理のないペースで大丈夫です」
支援者が意識すべきポイント
信頼関係は「築く」もの
信頼は一朝一夕では築けません。日々の関わりの中で、言葉・態度・姿勢のすべてが信頼の土台となります。
支援者自身の自己理解も重要
アサーションを実践するには、自分の価値観や感情を理解しておく必要があります。自己理解が深まるほど、相手への共感力も高まります。
継続的な振り返りと学び
支援者としての成長には、振り返りと学びが欠かせません。ラポール形成やアサーションの実践を通じて、支援の質を高めていきましょう。
まとめ
ラポール形成とアサーション技術は、支援者が相談者との信頼関係を築くうえで欠かせない要素です。安心感と率直なコミュニケーションが両立することで、支援の効果は飛躍的に高まります。まずは日々の関わりの中で、相手に寄り添い、自分の思いも丁寧に伝えることから始めてみましょう。
支援の現場で「信頼される支援者」になるために、この記事が一歩踏み出すきっかけになれば幸いです。
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