障害者枠での転職活動は、一般枠とは異なるポイントがいくつもあります。特にハローワークでの手続きや窓口対応は、当事者の不安を和らげ、スムーズに進めるための工夫が必要です。
本記事では支援員の視点から、「ハローワーク同行支援」の流れや事前準備、当日の注意点、そして支援員が同行するメリット・デメリットまでを解説します。
ハローワーク同行支援の基本的な流れ
ハローワーク同行の流れを簡単にまとめると以下のようになります。
ハローワーク同行の流れ
スケジュールや優先条件の整理
当事者主体のコミュニケーション
応募に向けた準備など

ハローワークに行くときは、事前準備をするかしないかで大きく変わります。
1. 事前準備
- 全体スケジュールの設計:面談予約日や求人検索、応募、就職大まかなスケジュールを作成する。
- 応募先のリストアップ:「給料」「勤務地」「業務内容」など、優先条件を整理。
- 必要書類の最終確認:履歴書、職務経歴書、障害者手帳や診断書などを揃える。
- 同行支援の役割分担:窓口でのやりとりは当事者主体とし、支援員はあくまでもフォロー役とする。
2. 窓口での対応ポイント
支援員が特に気をつけるべきポイントは、支援者がしゃべり過ぎず、当事者主体で話すことです。
- 当事者主体のコミュニケーション:窓口で質問や相談をする際は、必ず当事者本人が発言する機会を確保する。
- 支援員のサポート方法:質問リストの準備、言い回しの練習、会話が詰まったときのフォロー。
- 情報収集のコツ:求人数、企業情報、障害者枠の求人特有の要件などを細かくヒアリングする。
3. 同行後の振り返り
ハローワーク同行が終わったらそれで終わりではありません。必ず振り返りと、今後について話を行います。
- 窓口の対応内容をメモ:情報の正確さや不足点を翌日に共有する。
- 次回のアクションプラン作成:応募準備、企業研究、面接シミュレーションの日程を決定。
- 自己評価とフィードバック:当事者の安心度、支援員から見た課題点を整理。
ハローワークに行く前に決めておくべきこと
就職活動の全体スケジュールを設計する
転職活動は時間のかかるプロセスです。特に障害者枠の場合、ハローワークの窓口予約から面接調整までに要する日数が想像以上に長くなることもあります。そのため、以下のように全体スケジュールを設計しておくと安心です。
ステップ | 期限目安 | 主な内容 |
---|---|---|
求人リサーチ | 1週間以内 | 応募候補のピックアップと優先順位付け |
書類準備 | 2週間以内 | 履歴書・職務経歴書のブラッシュアップ |
ハローワーク窓口予約 | 翌週 | 同行支援の日程確定 |
応募&面談調整 | 1ヶ月以内 | 応募書類提出と面接日程調整 |
面接対策 | 面接日前 | 模擬面接、Q&A準備 |



障害者雇用の場合は事前に見学、または職場実習があることも多いので、その場合はスケジュールをさらにと調整しましょう。
求人に求める優先条件を明確にする
求人探しでは「何を一番大切にするか」を先に決めておくことが成功の鍵です。以下のポイントを軸に、必須条件・譲れない条件・希望条件を整理しましょう。
- 勤務地・通勤時間
- 勤務形態(フルタイム/パートタイム、時短勤務など)
- 賃金水準と昇給・賞与制度
- 職場環境(バリアフリー対応、配慮体制)
- 業務内容の自分への適合度
窓口で話すのは当事者主体、支援員はフォロー役
支援員が同行すると心強い一方で、窓口担当者との会話が支援員任せになりがちです。しかし本来、当事者本人が自分の状況や希望を直接伝えることが大切です。支援員は下記のようなフォローに徹します。
- 会話の補足説明
- 質問するタイミングの合図
- 緊張緩和の声がけ
- 配慮事項の補足
- 書類記入時のサポート
当事者がうまく答えられないときはおそらくアイコンタクトなど合図がありますので、そのサインは見逃さないように注意しましょう。また、配慮事項は当事者一人で伝えると誤解されることもあるため、合理的配慮を考えて支援員から補足しましょう。
支援員が同行するメリット・デメリット



私が支援している精神障害、発達障害の方は同行することがほとんどですが、たまに一人で行ってもらうこともあります。メリットとデメリットも知っておきましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
当事者の緊張を和らげる | 本人の自己決定感が薄れる場合がある |
手続きの抜け漏れ防止 | 支援員同行が前提だと自立度の評価が下がる恐れ |
専門的アドバイスが受けられる | 同行スケジュール調整で遅れることもある |
情報整理や書類作成の補助 | 本人の対応スキル習得機会が減少 |
私事業所では、同行無しで進めた場合、支援員の意図とは違うタイミングで、合わない求人に応募を進めてしまうということもよくありました。
また、ハローワークと事前に連携しておくことも重要です。
そして、支援員と当事者の信頼関係がそもそもなかった場合は同行しても逆効果になります。以下の記事も参考にしてみましょう。


就労支援員が知っておきたいQ&A
例えば就労移行支援事業所に入社して間もない方や経験が浅い方、もしくはベテランだからこそ初心に戻って学びたいという向上心の高い方は以下の内容を見ておくことをおすすします。
Q&A
- 就職活動が本格的に始まってから行ったのでいいですか?
-
いいえ、早い方がいいです。何度も足を運ぶことで担当者と当事者の関係性も深くなり、マッチングの求人に出会いやすくなります。
- ハローワークに行けば誰にでも非公開求人がもらえますか?
-
誰でもではありません。特に勤怠の安定を重要視する会社も多いので、就労移行などでどのような訓練をしているかが重要です。
- 就職の経験はありませんが、就労移行で無遅刻・無欠席です。アピールになりますか?
-
立派な実績です。自信をもち、支援員は必ずハローワークに伝えましょう。
- 主役は当事者なので、支援員は何も準備しなくてもいいですか?
-
事前にハローワークへ情報共有、面談が終わった後も電話連絡などしっかりと対応することで事業所との信頼関係にも繋がります。手間を惜しんではいけません。
支援員として当事者の事前準備でできること
私が支援として実際に行っていることですが、当事者にはハローワーク担当者へ話すことを事前にメモ、もしくはパソコンで資料を作っていただいています。
例えば「私はパソコンの基本操作ができます」というのと、「優先条件をパソコンでまとめました。」と報告してスキルを直接見せるのでは全く意味が違ってきます。
他の就労移行との差別化にもなりますので、当事者の印象を上げるためのコツとなります。



資料を作ると言っても突然伝えると焦って中途半端になるので、事前にポイントなども伝えておきましょう。
まとめ:安心してハローワーク同行支援を活用するために
障害者枠の求人応募前には、全体スケジュールの設計と求人に求める優先条件の整理が欠かせません。窓口で話すのは当事者主体とし、支援員はあくまでフォロー役に徹することで、自立度と安心感を両立できます。
事前準備をしっかり行い、ハローワーク同行支援を活用して、よりよく働ける会社を見つけましょう。