障害者雇用に関わる支援者として、制度の基本を理解しておくことは、企業との連携や利用者支援において非常に重要です。
本記事では「法定雇用率」の仕組みや背景、現場での活用ポイントをわかりやすく解説します。
法定雇用率とは?
法定雇用率とは、企業が一定割合以上の障害者を雇用することを義務付けた制度です。障害者の雇用機会を確保し、社会参加を促進するために設けられています。

企業としては法定雇用率を達成するために、精神障害や発達障害の方の雇用に対して関心も深まっています。
企業規模 | 法定雇用率 | 障害者雇用義務 |
---|---|---|
民間企業(従業員43.5人以上) | 2.5% | 1人以上の障害者を雇用 |
国・地方公共団体 | 2.7% | 職員数に応じた障害者雇用 |
教育委員会 | 2.5% | 教職員数に応じた障害者雇用 |
※2024年4月より法定雇用率が引き上げられています。最新情報は厚生労働省の公式ページをご参照ください。
厚生労働省|障害者の法定雇用率の引き上げ
制度の背景と目的
障害者の雇用は、単なる義務ではなく、社会的な包摂や多様性の実現に向けた重要な取り組みです。法定雇用率制度は、以下のような目的で設けられています。
- 障害者の就労機会の確保
- 企業の社会的責任の促進
- 職場の多様性と包摂性の向上
- 障害者の経済的自立の支援
以前は障害という言葉だけで人事が過剰に警戒することも多かったのですが、雇用実績のある企業は「思っていた印象と全然違った」と話されることも多く、支援者の言葉にも耳を傾けるようになっています。
支援者が現場で意識すべきポイント
支援者として、制度の理解だけでなく、企業との連携や利用者への説明にも活用することが求められます。以下のような観点が重要です。
企業との面談時に活用する視点
- 企業規模に応じた雇用義務の説明
- 雇用率未達成時の納付金制度の紹介
- 障害者雇用に関する助成金や支援制度の案内
利用者への説明で意識すること
- 「障害者雇用枠」の意味と背景
- 企業が障害者を雇用する理由(制度的・社会的)
- 安心して応募できるような情報提供
よくある誤解とその対応
法定雇用率に関して、現場では以下のような誤解が見られます。支援者として正しい情報を伝えることが重要です。
誤解 | 正しい理解 |
---|---|
障害者雇用枠は特別扱いである | 制度上の合理的配慮であり、差別ではない |
法定雇用率を満たせばそれで十分 | 職場定着や業務配慮も重要な支援要素 |
精神障害者は雇用しづらい | 支援体制や環境調整で十分に活躍できる |
発達障害は全然覚えない | やり方や環境を変えることで能力を発揮できる |
関連制度と支援の連携
法定雇用率制度は、他の就労移行支援などと連携することで、より効果的な障害者雇用が実現できます。また、助成金などの仕組みも知っておくと便利です。厚生労働省のページも見てみましょう。
支援員の立場で法定雇用率で感じたこと



法定雇用率の関係で企業も雇う方針があるのは分かりましたけど、実際の現場の声が気になります・・・



私が関わってきた人事側や従業員側のこと、合理的配慮などで感じたことなどお伝えします。
支援員がついているか一人なのかで全く違う
実際に企業の方からお話を聞いていると、ハローワークを通じて一人で障害者枠として応募された方は対応が難しいと聞きました。例えば「注意したいけどどこまで言っていいか分からない」「急に休んだけど理由を言ってくれない」「どこまで配慮したらいいか分からない」など・・・。
逆に定着支援など支援員がついている場合は間に立ちますので、本人の困りごとと企業の困りごとの双方を聞いて、合理的配慮についても見直します。
定着支援とは、障害を持つ方が就職後に長く働き続けることを目指した支援です。就労移行支援事業所から就職した場合にサポートがつくことが多く、最大で3年間使うことができます。事業所によってサポートは多少変わりますが、主に「面談」「業務時間や残業時間の調整」「対人面の相談」「業務内容の相談」など行っています。
法定雇用率を満たすための困りごと
支援員がついて就職することで先ほどのような多くのメリットがありますが、逆にサポートして困ることもあります。
例えば以下の事例です。
- 企業側の中でも人事と現場で意見が違う
- 障害をもつ当事者が「配慮されて当たり前」と誤解している
- 直近で障害者雇用がうまくいかなかった事例があると企業は慎重になる
よくある例として人事側と現場で意見が違うときは、本人の意志だけで解決することは難しいことが多いです。



実際に意見が違うときは、支援員も企業訪問や電話など小まめに連携を取り、全体を見ながら調整に入ります。
まとめ:支援者としての制度理解が信頼につながる
法定雇用率は、障害者雇用の入口となる制度です。支援者が制度の背景や仕組みを理解し、現場で活用することで、企業との信頼関係や利用者の安心感につながります。単なる数字ではなく、「誰かの働く機会を支える制度」として捉えることが大切です。
この記事は、障害者就労支援の現場経験をもとに執筆しています。ご質問やご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。