障害者支援や就労支援の現場で、「関わり方ひとつで、ここまで人は変わるのか」と感じた経験はないでしょうか。
同じ支援内容、同じプログラムであっても、支援員の言葉や態度、期待のかけ方によって、利用者の表情や行動が大きく変わることがあります。
その背景にあるのが、心理学で知られるピグマリオン効果です。
この記事では、ピグマリオン効果の基本的な意味から、障害者支援・転職支援の現場で実際に起きている変化、そして支援員・当事者それぞれが活かせるポイントまで、現場目線で詳しく解説します。
ピグマリオン効果とは?心理学で証明された「期待の力」
ピグマリオン効果とは、他者から期待されることで、成績や行動が向上する現象を指します。
1960年代、心理学者ローゼンタールが行った実験が有名です。
教師に対して「この生徒たちは今後大きく成長する可能性が高い」と伝えたところ、実際には無作為に選ばれた生徒たちの成績が向上しました。
支援員教師の接し方や無意識の態度が変わり、それが生徒の成長を後押ししたのです。
ピグマリオン効果を簡単に言うと
- 期待される → 自信が生まれる
- 自信が生まれる → 行動が変わる
- 行動が変わる → 結果が変わる
この連鎖が、ピグマリオン効果の本質です。
障害者支援の現場で起きているピグマリオン効果



ピグマリオン効果は、学校教育だけでなく、障害者支援や福祉の現場でも日常的に起きています。
支援員の「見方」が利用者の行動を左右する
たとえば、同じ利用者に対しても、
- 「この人はここまでが限界だろう」
- 「環境が整えば、まだ伸びる可能性がある」
どちらの見方をしているかで、支援の質は大きく変わります。



実際に私が支援してきたご利用者でも、繰り返し評価、肯定することで「自分の得意分野」に自身を持つことに繋がりました。
期待をかけられた利用者は、
- 新しい課題に挑戦しようとする
- 失敗しても立て直そうとする
- 自分の可能性を疑いにくくなる
一方、期待されない環境では、行動自体を起こさなくなってしまうこともあります。
ゴーレム効果という落とし穴
ピグマリオン効果の反対に、ゴーレム効果があります。
これは、低い期待をかけられることで、パフォーマンスが下がってしまう現象です。
障害者支援の現場では、
- 過度な配慮
- 先回りしすぎる支援
- 「無理をさせない」という名の制限
が、知らず知らずのうちにゴーレム効果を生んでしまうことがあります。
「〇〇のご利用者はきっとミスをするだろう」と先読みして支援しすぎると、本来であれば本人が「メモを取る」などの工夫もしなくなってしまう。
転職・就労支援におけるピグマリオン効果の重要性
障害者の転職・就労支援では、ピグマリオン効果が特に強く影響します。
自己肯定感が低い状態での転職活動
多くの障害のある方は、過去に
- 失敗体験
- 否定された経験
- うまくいかなかった就労経験
を重ねています。
その結果、
- 「どうせ自分には無理」
- 「また失敗するかもしれない」
という思考が強くなりがちです。
支援員の期待が転職成功率を左右する
支援員が
- 強みを言語化する
- 小さな成功を評価する
- 可能性を前提に話す
これだけで、面接時の表情や受け答え、行動量が大きく変わります。
結果として、以下の変化に繋がります。
- 応募数が増える
- 面接通過率が上がる
- 就職後の定着率が向上する



特に就職後の定着率と言うのは重要で、目の前の就職活動はうまくいっても、その後長く続くかどうかは大きく変わります。
支援員が今日からできるピグマリオン効果の活かし方
ここでは、支援現場ですぐに実践できるポイントを整理します。
期待は「曖昧」にせず言葉にする
- 頑張っているね
- そのうちできるようになるよ
- いいんじゃないかな
- 〇〇ができるようになったのは、あなたの頑張った証拠です
- 〇〇を積み重ねたからこそ、今体調が安定している
- この課題を一つずつクリアしたからこそ、Excelの基礎知識は習得しているよ
結果ではなくプロセスを評価する
- 行動したこと
- 挑戦したこと
- 工夫したこと
を言語化して伝えることが重要です。
支援現場では、訓練した内容を結果に出すためにも、ワークシートや課題など形に残るものを作ったうえで関係機関や主治医に見せるのが効果的
ピグマリオン効果を高める関わり方チェック表
| 項目 | できているか |
|---|---|
| 可能性を前提に話している | ▢ できている ▢ できていない |
| 成功体験を言葉にしている | ▢ できている ▢ できていない |
| 決めつけた見方をしていない | ▢ できている ▢ できていない |
| 具体的に評価できる方法をとっている | ▢ できている ▢ できていない |



本人が頑張ったことを主治医に見せることで、主治医からの評価&本人の自己肯定感にも繋がります。
病院への受診同行時については受診同行とは?支援者が知っておきたい基本と実践ポイントの記事で解説しています。
障害のある当事者へ伝えたいこと
もし今、転職や仕事に対して自信が持てなくても、それはあなたの能力の問題ではありません。
期待されない環境に長くいた結果であることも多いのです。
人は、
- 誰かに信じてもらえる
- 可能性を認めてもらえる
その環境に身を置くだけで、少しずつ変わっていきます。
支援を受けることは、甘えではありません。
自分の可能性を引き出すための、正当な選択です。
まとめ|ピグマリオン効果は支援の質を大きく変える
ピグマリオン効果は、特別な技術ではありません。
支援員の見方、言葉、態度の積み重ねが、利用者の未来を変えていきます。
- 期待は力になる
- 関わり方で行動は変わる
- 環境が人を育てる
障害者支援・転職支援の現場だからこそ、ピグマリオン効果を正しく理解し、活かしていくことが重要です。
また、就労移行に関する記事も以下にまとめていますので、是非参考にしましょう。
