私たちの日常には、さまざまなストレスや不安、落ち込みがつきものです。そんなとき、自分自身の「考え方」と「行動」を見直すことで心のバランスを整える方法が認知行動療法(CBT)です。
本記事では、認知行動療法の意味から具体例、おすすめの人、実践ステップまでを詳しく解説します。
認知行動療法の基本と意味
認知行動療法は、1970年代にアメリカで発展した心理療法の一つで、「認知(ものの捉え方)」と「行動(行動パターン)」の両面からアプローチします。
苦しい気持ちの背景にある思考のクセを見つけ、柔軟な思考に書き換え、行動を変えることで、うつ・不安・ストレスといった心の問題を緩和します。
「認知」とは?
認知とは、私たちが世界をどう解釈し、どう意味づけるかのプロセスです。たとえば、同じ出来事を経験しても、「自分には価値がない」と捉えるか「次は頑張ればいい」と捉えるかで、感じるストレスは大きく異なります。
「行動」とは?
行動とは、考え方に基づいて行う具体的な行動パターンです。ネガティブな思考が強いと、行動は消極的になり、ますます気分が落ち込みます。逆に、前向きな思考に書き換えることで、行動にも好循環が生まれます。
認知行動療法が効く理由

認知行動療法は多くの病院や支援者でも活用されています。そのポイントや期待される効果を表にまとめました。
ポイント | 仕組み | 期待される効果 |
---|---|---|
思考の発見 | 自動思考を記録し、クセを把握 | ネガティブ思考の認識が向上 |
思考の修正 | 合理的・建設的な思考への書き換え | 前向きな自己評価が可能に |
行動実験 | 新しい行動を試し、結果を検証 | 自己効力感(やればできる感覚)の向上 |
精神障害になると転職活動でもうまくいかないことが多く、実は自己効力感が行動に繋がっていることもあります。詳しくは以下の記事で解説しています。


こんな人におすすめ
認知行動療法は支援現場でもよく行われていますが、特に以下の方はおすすめです。
- 長期間続くうつ症状や気分の落ち込みを改善したい人
- 理由のはっきりしない不安に悩んでいる人
- 日常的なストレス対処の方法を身につけたい人
- 自分の考え方のクセを知り、柔軟になりたい人
認知行動療法の具体例



認知行動療法はどのように行われるのか、より具体的な事例で紹介します。
例1:仕事で失敗したときの思考パターン
「失敗した=自分はダメ人間だ」という全か無か思考を持つと、自己否定に陥ります。ここで認知行動療法では、以下のように書き換えます。
- 自動思考の記録:失敗した瞬間の考えを書き出す(例:「自分は価値がない」「もうダメだ」)
- 思考の検証:証拠を探す(本当に価値がない?他の成功体験は?)
- 合理的思考への書き換え:「失敗は誰にでもある。次はこう改善しよう」
- 行動実験:小さな成功体験(短いタスクを完了させる)を積み上げる
また、もし合理的配慮がうまくいっていないと感じた場合は職場での合理的配慮がされないとき、どう対応すべきかの記事も見てみましょう。
例2:プレゼン前の緊張
「上手く話せなかったらどうしよう」という予測不安が強いと、準備不足や緊張増大を招きます。認知行動療法では次のように対処します。
- 自動思考の記録:緊張した瞬間の考えをメモ
- 思考の検証:過去の成功例や準備状況を振り返る
- 合理的思考への書き換え:「緊張するのは当然。練習を重ねれば安定する」
- 行動実験:短時間の模擬プレゼンを繰り返し実施
認知行動療法の実践ステップ
以下のステップに沿って、自分一人でも認知行動療法を実践できます。
流れ
用紙やアプリに書き出す
必要に応じて他者に協力を依頼し、第三者視点で考える
「もっと現実的で建設的な考え方」を考える
定期的に見直し、継続する
認知行動療法のよくある質問と回答
Q&A
- 認知行動療法はカウンセリングを受けないとできない?
-
いいえ、セルフワークでも効果があります。専門家のサポートがあると効果的ですが、ワークシーやアプリ、書籍やオンライン講座など様々な方法で活用されています。
- どんな悩みに効果がありますか?
-
うつ症状や不安障害、ストレス、完璧主義などに有効とされています。他にも多くの場合に効果が期待できます。
- 毎日やらないといけない?
-
私の事業所では週に1回程度で行っています。無理のない範囲で継続して行うことがコツです。
- ネガティブな思考ばかりでてきて落ち込みます。
-
それがむしろ「気づけていている証拠」です。ネガティブな感情は否定するのではなく、気づいて検証、書き換えることが目的です。



少しずつですが、何となくわかった気がします



認知行動療法は「自分で使える心のスキル」です。ある程度慣れてくると、自然に思考のクセに気づき、柔軟に対応できるようになります。必要なときに取り出せる「心のツール」として持っておくと安心です。
認知行動療法ですぐに結果を求めるのではなく、繰り返し行うことで自身のしんどさを軽減する方法を身に付ける。実際に障害者雇用で悩まれている就職者も取り組んでいることが多い
まとめ:認知行動療法のポイント
- 認知を見直す:自動思考を可視化し、思考のクセに気づく
- 思考を修正する:合理的で建設的な考えへ書き換える
- 行動を変える:新しい行動を実験し、自信を積み重ねる
認知行動療法は、自分自身のものの見方と行動パターンに働きかけることで、心の健康を取り戻す強力なツールです。
まずは簡単なステップから始めて、自分だけの心のサイクル改善を体感してみましょう。