就労定着支援の現場では、「就職できた=支援が終わり」ではありません。
実際には、就職後こそさまざまなトラブルが起こりやすく、支援員の関わり方次第で職場定着できるか、早期離職につながるかが大きく変わります。
本記事では、定着支援で特によくあるトラブルを整理し、
支援員としてどのように関わればよいのか、具体的な解決策 を解説します。
これから定着支援を担当する方はもちろん、「最近うまくいかないケースが続いている」と感じている支援員の方にも役立つ内容です。
定着支援でトラブルが起こりやすい理由
支援員実際に私が定着支援を行っている中でも多くのトラブルを経験しました。
定着支援で問題が起こりやすい背景には、次のような要因があります。
- 利用者・企業・支援員の三者の認識がズレやすい
- 就職前に見えていなかった課題が表面化する
- 「頑張らなければ」という思いから相談が遅れる
- 相談しなくてもいいかなと思うことから支援員に報告しない
就労開始直後は、本人も企業も緊張しており、小さな違和感が放置されやすい時期でもあります。
だからこそ、支援員が早めに気づき、トラブルを「問題が大きくなる前」に扱うことが重要です。
定着支援でよくあるトラブルと解決策
ここからは、定着支援で特に多いトラブルを一つずつ見ていきます。
① 配慮を求めすぎている
会社との間では合理的配慮がありますが、障害を持っているから配慮してほしいと思っても行き過ぎる場合があります。
事業主は、過剰な配慮はしなくていいことを明記されています。
事業主は、過重な負担に当たるか否かについて、次の要素を総合的に勘案しながら個別に判断する。合理的配慮の提供の義務は、事業主に対して「過重な負担」を及ぼすこととなる場合を除く。
① 事業活動への影響の程度、 ②実現困難度、 ③費用・負担の程度、
④ 企業の規模、 ⑤企業の財務状況、 ⑥公的支援の有無引用元:合理的配慮指針_厚生労働省



つまり、業務に支障が出るほど困難な配慮かどうかは個別に判断されます。
よくある状況
実際には以下のようなトラブル・困りごとがあります。
- 業務量や業務内容について細かい配慮を求め続ける
- 少しの負担でも「できません」と伝えてしまう
- 企業側が「どこまで配慮すればいいのか分からない」と感じている
支援員の視点
配慮を求めること自体は悪いことではありません。
しかし、「配慮=免除」になってしまうと、職場との関係が悪化しやすい のも事実です。
全てにおいて配慮の申し出をするのではなく、就労側も努力した上で「〇〇は配慮してもらうことで〇〇ができる」ということを伝えることが必要
解決策
合理的配慮は会社側にしっかりと理由を説明する必要があります。
- 「配慮が必要な理由」を整理し、優先順位をつける
- 本人に「できること」「工夫すればできること」を一緒に確認する
- 企業には「一時的な配慮」と「将来的な目標」をセットで伝える
支援員が間に入って言語化することで、「配慮のしすぎ」を防ぎつつ、建設的な調整 が可能になります。
② 企業が配慮してくれない
定着支援として悩みを聞く上で、多くの方から「企業が配慮してくれない」と相談があります。実際には以下のような状況があります。
- 障害特性を理解してもらえていない
- 配慮をお願いしても「他の社員と同じだから」と断られる
- 現場担当者と人事の認識がズレている
支援員の視点
企業側が「配慮をしたくない」のではなく、「何をどう配慮すればいいか分からない」 ケースも多くあります。



定着支援として経験の浅い職員もそうですが、ある程度経験を積んでいる職員でも、「配慮すべきか」「そもそも何に悩んでいるか」など分からなくなるときもあります。
解決策
以下の解決策も参考にしてみましょう。
| ポイント | 具体的対応 |
|---|---|
| 伝え方 | 抽象的ではなく「業務上の影響」で説明する |
| 資料 | 配慮事項を1枚のシートにまとめる |
| 関係者 | 現場・上司・人事をできるだけ同席させる |
| すり合わせ | 本人の悩みごとと伝える内容を事前にすり合わせ |
支援員が「通訳役」になることで、企業の理解が進み、配慮が実現するケースは少なくありません。
職員も抱え込んで相談しないのはNG
支援員にも多いのが、相手のことを考えるのに「自分を守ることができない」ということ。一人で抱え込むと必ずというほどどこかでキャパオーバーになり、ストレスが大きくなります。
先輩や上司、後輩でもいいので、どこかで必ず相談しましょう。
支援を行っていると「自分の支援が間違っていたかもしれない」と感じることも多い。他の職員に相談しておくことで、そういった際にもストレスが大きく軽減される。
本人との面談のポイント



定着支援を行う上で、最も重要ともいえるのが定着面談です。本人との面談時のポイントについて紹介します。
- 面談では「困っていること」より「最近どうですか?」から入る
- 雑談も交えて話しやすい雰囲気を作る
- 小さな変化(表情・遅刻・欠勤)を見逃さない
- 相談すること自体が評価につながると伝える
本人が悩むを話すときはかなり勇気がいるものです。話した相手には必ず肯定しましょう。
仕事内容が希望と違う場合
よくある状況としては以下の通りです。
- 求人票と実際の業務内容が違う
- 想像していた仕事と現実のギャップに落胆する
- モチベーションが一気に下がる
この場合は以下の解決策を参考にしましょう。
- 「何が違うと感じているのか」を具体化する
- 業務調整や役割変更の余地があるか企業と相談
- 短期的・長期的なキャリアの視点で整理する
「合わない=すぐ退職」ではなく、調整の余地を一緒に探す姿勢 が重要です。
定着支援で支援員が意識したい3つのポイント



最後に、支援員が必ず意識しておきたいこともお伝えします。
- 問題が小さいうちに扱う
- 本人・企業・支援員の認識を揃える
- 「できていること」にも目を向ける
定着支援は、トラブル対応だけでなく「続いている理由」を一緒に確認する支援 でもあります。
本院が頑張っていることを肯定し、トラブルが小さいうちに早めに対処していきましょう。
まとめ|定着支援は「関係調整の支援」
定着支援で起こるトラブルの多くは、誰かが悪いのではなく、すれ違いや誤解から生まれます。
支援員が間に入り、言葉を整理し、気持ちを翻訳し、現実的な選択肢を提示することで、利用者が安心して働き続けられる環境が整います。
この記事を参考にし、定着支援として活かしていきましょう。
