ADHD・ASDに共通する“実行機能の弱さ”とは?原因と対策を紹介

ADHD・ASDに共通する実行機能の弱さの原因と対策を紹介するアニメ風アイキャッチ画像

「仕事で何度も同じミスをしてしまう」 「頭の中が整理できず、優先順位が分からない」 「頑張っているのに仕事が続かない」

ADHD・ASDの方の中には、このような悩みを抱えている人も少なくありません。

実際に支援現場でも、

  • 何度聞いても指示を忘れてしまう
  • マルチタスクで混乱する
  • 仕事の段取りが組めない
  • 疲れ切って退職してしまう

といった相談を多く受けます。

その背景にあるのが、 「実行機能の弱さ」です。

支援員

本記事では、ADHDとASDの両者に共通する実行機能の弱さの特徴や原因を整理し、日常生活や学習・職場で活かせる具体的な対策を解説します。

ADHD・ASDの困りごとについてはADHD・ASDの仕事の困りごと完全ガイド|原因・対策・働きやすくする工夫を支援員が解説の記事にまとめています。

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目次

実行機能の基礎知識

まずは実行機能の意味について紹介します。

実行機能とは何か

実行機能は、前頭前野を中心に働く認知機能の総称です。主に次の5つの要素から構成されるとされています。

  1. ワーキングメモリ:情報を一時的に保持し加工する能力
  2. 認知的柔軟性:視点や戦略を切り替える能力
  3. 抑制制御:衝動的行動や注意の逸脱を抑える能力
  4. 計画・組織化:目標達成の手順を立てて行動する能力
  5. 自己モニタリング:行動や学習状況を振り返り、修正する能力
支援員

ワーキングメモリは、
「口頭で3つ指示されると最後しか覚えられない」
「会話しながらメモを取ると内容が抜ける」
といった困りごとにつながります。

ワーキングメモリについては以下の記事でも詳しく解説しています。

実行機能が不足すると生じる問題

実行機能は人によって差がありますが、不足しているときの問題については一般的に以下のようなものがあります。

  • 物事を後回しにしやすい(先延ばし)
  • 段取りが苦手でタスクが完了しない
  • 注意が散漫になりミスが増える
  • 計画倒れや目標未達成が頻出
  • 気分ややる気の波が大きい

ADHDにおける実行機能の弱さ

支援員

一般の人にも実行機能が低い場合もありますが、ADHDやASDなどの発達障害の方は特に実行機能の弱さが目立つことが多いです。

支援でも感じた主な特徴

私が実際に支援してきた中でも、以下の特徴があります。

  • 忘れ物や遅刻が多い
  • 複数の作業を同時に処理しにくい
  • 集中力が続かず雑務に気を取られる
  • 衝動的な言動や行動抑制の困難

また、対策としては以下の記事も参考になるので見てましょう。

なぜADHDの人は段取りが苦手なのか?

ADHDの実行機能弱化は、前頭前野やドーパミン・ノルアドレナリンの神経伝達系の機能低下が背景にあると考えられています。これによりワーキングメモリの保持や行動抑制が難しくなり、日常生活での注意制御や計画実行に支障が生じます。

ASDにおける実行機能の弱さ

支援でも感じた主な特徴

  • ルーチンが崩れるとパニックになりやすい
  • 新しい環境や変化への対応が苦手
  • 対人コミュニケーションや柔軟な思考の困難
  • 詳細な情報にこだわりすぎて全体像が見えにくい

なぜASDの人は環境の対応が苦手なのか?

ASDの実行機能弱化は、情報処理過程の過集中や感覚過敏、社会的手がかりの認識困難などが複合的に影響し、認知的柔軟性や自己モニタリングが低下することに起因します。結果として変化への適応や段取りの切り替えに苦労します。

実行機能の弱さで仕事がつらくなる場面

実行機能の弱さが原因で仕事がつらくなる4つの場面(優先順位の混乱、スケジュール管理、報連相の抜け漏れ、仕事の後回し)を解説した日本のアニメ風のイラスト。

私は休職者や障害者雇用、就労移行などで様々な悩みを聞いてきましたが、以下の場面がありました。

優先順位が分からず混乱する

「なるべく早く」というような曖昧な言葉は苦手とすることが多いです。

支援員

「〇〇をやって」「こっちも早めで」「これもできるだけ早く」などと言われると、混乱して全てが遅くなってしまいます。

スケジュール管理が苦手

もし「月末までに完了」と指示を出していたとしても、完了までに「メール作成」「材料準備」「関係者へ連絡」「計画書提出」「注文」「現場へ・・・」というように多くのタスクが含まれると、「いつまでに何をすればいい」という細かい部分が組めなくなります。

報連相で抜け漏れが起きやすい

本人にとってはしっかりと報告しているつもりでも、「誰から」「いつ」「どのように」「今後何が必要」などの項目の中でもいくつかは抜けがあることが多いです。

仕事を後回しにしてしまう

例えば「今すぐ5分以内に」というような指示であればすぐにできるのですが、「来週でいいよ」などという場合はほとんどの場合後回しになって、結果的に間に合わなくなります。

ADHDとASDに共通する実行機能弱化のパターン

スクロールできます
項目ADHDの特徴ASDの特徴
ワーキングメモリ短期記憶の保持が困難情報の一元管理が苦手
認知的柔軟性他の刺激に注意を奪われやすいルーチン優先で切り替えが難しい
抑制制御衝動的行動・発言が多い過集中した行動の中断が難しい
計画・組織化段取りを立てられず抜け漏れが多い全体像を把握せず細部に固執
自己モニタリングミスに気づきにくい行動の効果を予測しにくい

実行機能弱化への共通対策

支援員

要因が分かった後は、対策を知って実行することが重要です。

環境調整でサポートする

まずは働きやすいように環境を調整しましょう。

  • 視覚的スケジュールを使い、毎日の予定を見える化する
  • 作業スペースを整理し、不要な刺激を排除する
  • タスクを細かく分割し、達成感を積み重ねる

マルチタスクは多くの方が苦手と感じているため、以下の記事でもまとめました。

ツール・アプリで補助する

ツールなどもとても便利です。

  • リマインダーやアラーム機能で時間管理を強化
  • ToDoアプリでタスクの優先順位を明示的に設定
  • 音声入力やメモアプリで瞬時に記録し、ワーキングメモリを助ける

以下の記事でさらに詳しく解説しています。

学習・職場での工夫

聴覚過敏の方はノイズキャンセルイヤホンを行うことで全く集中力が変わってきます。

  • テストや会議では要点を箇条書きで示す
  • 作業中の中断を減らすために、ノイズキャンセルイヤホンを活用
  • 定期的な振り返りミーティングで自己モニタリングを促す

支援現場での実例と成功例

先ほどまでの対策も行っているのですが、私が就労支援員としてサポートして劇的に変化したと感じた例を紹介します。

それは以下の例です。

支援現場の実例

  • 訓練内容を事前に明確化し、今週取り組むことなどを具体的に指示
  • 「時間を計測しながらミスなく行う」のをやめ、「二重チェックを絶対とし、正確性優先の訓練へ切り替え」
  • 作業の目標時間を設定する際は、全員で同じ目標タイムではなく、その方に合わせて個人の目標タイムを設定
  • ミスが多く発生した際は、「気を付ける」ではなく、「ミスのチェック方法」を様々な方法で試行錯誤する

自身に合う方法が一発で決まるわけではないのですが、いろいろ試してみてハマるときは本当に劇的に変わりました。

個別支援のポイント

発達障害を持つ方への個別支援における3つのポイント(特性を引き出す、成功体験の積み重ね、チームでの支援)を、アニメ調のイラストで分かりやすく解説したインフォグラフィック。
支援員

私の会社では、発達障害は悪いことではなく、個性として支援しています。発達障害だからだめなのではなく、環境を整えたり工夫することで仕事でも能力を発揮します。

本人の特性を引き出す

支援者は本人の強み・得意分野を見つけ、モチベーションを高める環境作りを行います。興味・関心を入口にすると、自発的な学習や行動改善が進みやすくなります。

もし就労移行支援を利用していない場合は、以下の記事も見てみましょう。

小さな成功体験を積み重ねる

計画→実行→振り返りのサイクルを回しやすくするため、タスクを細かく分けて短時間で完結する課題を設定します。成功体験を得ることで自己効力感が向上します。

チームで支援する

学校や職場では、教師・上司・同僚が役割分担しながら支援環境を整えます。定期的なチェックインやフィードバックを通じて、自己モニタリングを強化しましょう。

よくある質問

ここで、実行機能についてよくある質問に対してお伝えします。

Q&A

実行機能は改善できますか?

改善できます。脳そのものを鍛える方法と、環境調整や仕組みを整える方法があります。スモールステップで少しずつ目標を立てたり、アプリやツールを使って対策することも有効です。

ADHDとASDで実行機能の弱さは違いますか?

はい。ADHD:「多動・衝動・不注意」による、実行の脱線や忘れてしまうことがメイン。ASD:「こだわり・変化への弱さ」による、切り替えの困難やパターンの固執がメイン。ただ、最近ではADHDとASDの両方が混在していると診断されるケースも多いです。

大人になってからでも対策できますか?

はい。私が支援している方は基本的に大人です。働く際も「合理的配慮」を行うとともに、本人にとって合う方法を見つけることが大切です。

相談しても実行機能について明確な答えがない

支援員のスキルもあるのですが、多くの場合「相談時の伝え方」に課題もあります。自身が「何に困っている」「何の助言をほしい」など相談の仕方を工夫すると、返ってくる返事も変わります。

まとめ

実行機能の弱さは、 「努力不足」ではなく脳の特性によるものです。実際の支援現場でも、 工夫や環境調整によって働きやすくなった方を多く見てきました。

大切なのは、 「できない自分を責める」ではなく、 「どう工夫するか」を考えることです。

特に、環境調整やツールの活用、タスクの細分化によって「できる体験」を積み重ねることが、自己効力感の向上につながります。

また、支援者や周囲の人が本人の特性を尊重し、強みを活かす関わり方をすることで、実行機能の課題を補いながら成長を促すことができます。

本記事が、ADHD・ASDの実行機能に関する理解を深め、支援や工夫のヒントとなれば幸いです。

こんな悩みはありませんか?

  • 仕事が続かない
  • 配慮の伝え方が分からない
  • 一人で転職活動が不安

それなら、就労移行支援という選択肢があります。

現役支援員として本当に勧められる事業所をまとめました。

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