「職場の人とうまく話せない」「上司との関係がつらい」「同僚との距離感が分からない」。
障害者雇用で働いている方から、このような人間関係の相談を受けることは少なくありません。
仕事内容には満足していても、人間関係が原因で「仕事を辞めたい」と感じてしまうケースもあります。
実際に、私が就労移行支援や就労定着支援で関わってきた方の中にも、人間関係の悩みから体調を崩したり、離職を考えたりした方がいました。
しかし、人間関係の悩みがあるからといって、すぐに退職を選ぶ必要はありません。
考え方や相談の仕方を少し変えるだけで、働きやすくなるケースも多くあります。
この記事では、障害者雇用でよくある人間関係の悩みや、その対処法について、支援員の視点から詳しく解説します。
障害者雇用でも人間関係の悩みはある
「障害者雇用なら理解のある職場だから、人間関係で悩まない」と思われることがあります。
支援員しかし、実際には障害者雇用でも人間関係の悩みは起こります。
職場にはさまざまな価値観を持つ人が働いており、障害の有無に関係なく、人との相性やコミュニケーションの難しさはあります。
ただし、障害者雇用では相談窓口があったり、配慮について話し合える環境が整っていたりする企業も多くあります。
一人で抱え込まず、相談できる環境を活用することが大切です。
障害者雇用でよくある人間関係の悩み
支援員として相談を受ける中で、特に多い悩みを紹介します。
| 悩み | 具体例 |
|---|---|
| 上司との関係 | 指示が分かりにくい、相談しづらい |
| 同僚との距離感 | 雑談についていけない、孤立する |
| 障害への理解 | 配慮が十分に伝わっていない |
| 伝え方の違い | 言い方がきつく感じる、誤解される |
| 相談できない | 迷惑をかけたくなくて我慢してしまう |
これらは決して珍しい悩みではありません。
大切なのは、「悩んでいるのは自分だけではない」と知ることです。
対処法① 相手を変えようとしない
人間関係で悩むと、「相手に変わってほしい」と考えてしまうことがあります。
しかし、他人を変えることは簡単ではありません。
一方で、自分の受け止め方や関わり方は変えることができます。
例えば、言い方が厳しい上司に対して、「自分が嫌われている」と考えるのではなく、「仕事を正確に進めるための伝え方なのかもしれない」と捉え直すだけでも、気持ちが少し楽になることがあります。
もちろん、ハラスメントのような問題は別ですが、すべてを悪意として受け取らないことも大切です。
対処法② 一人で抱え込まない
支援員として最もお伝えしたいのは、「一人で抱え込まないこと」です。
「迷惑をかけたくない」「我慢すれば何とかなる」と思って相談が遅れると、体調を崩してしまうケースを何度も見てきました。
相談できる相手は、直属の上司だけではありません。
- 人事担当者
- 障害者職業生活相談員
- 就労定着支援員
- 就労移行支援事業所
- 主治医
- 家族
相談先を一人に限定せず、複数持っておくことで、安心して働き続けやすくなります。
対処法③ 「事実」と「解釈」を分けて考える
人間関係で悩んでいるときは、「事実」と「自分の解釈」が混ざっていることがあります。
例えば、上司に「ここを修正してください」と言われた場合、
- 事実:修正を依頼された
- 解釈:嫌われている、能力がないと思われている
というように、実際に起こった出来事と、自分が感じたことは別です。
解釈だけで判断すると、不安が大きくなってしまいます。
まずは「実際に起こったことは何だったのか」を整理する習慣をつけると、冷静に状況を見られるようになります。
また、自動思考が影響することも多いため、詳しくは“思考の罠”に気づく力:自動思考と認知の歪みを見抜く方法の記事も見てみましょう。
人間関係がつらいと感じたら読んでほしい記事
人間関係の悩みが続くと、「この職場で働き続けるべきなのか」と迷うこともあります。



実際に私が定着支援としてサポートしてきた方でも、多くの方が退職や転職するか悩まれていました。
仕事を続けるにしても、退職するにしても、まずはご自身が後悔せず、よく整理してから決めることが大切です。
「すぐに辞めるべきか」「もう少し様子を見るべきか」を判断するための考え方を、支援員の視点から詳しく解説しています。
対処法④ 相手との適切な距離感を保つ


「職場では全員と仲良くしなければならない」と考えてしまう方もいます。
しかし、仕事をするうえで大切なのは、友達になることではなく、お互いに仕事がしやすい関係を築くことです。
必要以上に相手に合わせようとしたり、無理に雑談へ参加したりすると、かえって疲れてしまうことがあります。
最低限のあいさつや報告・連絡・相談ができていれば、十分に良い人間関係を築いていると言えるでしょう。
「全員に好かれること」を目標にするのではなく、「仕事で信頼されること」を意識すると気持ちが楽になります。
対処法⑤ 配慮事項を見直して相談する
人間関係の悩みは、配慮事項を見直すことで改善する場合もあります。
例えば、次のような配慮が有効なケースがあります。
| 困りごと | 相談できる配慮の例 |
|---|---|
| 口頭指示だけでは理解しづらい | メモやチャットでも伝えてもらう |
| 大人数での会話が苦手 | 個別で説明してもらう |
| 質問するタイミングが分からない | 相談時間を決めてもらう |
| 急な予定変更が苦手 | できるだけ早めに共有してもらう |
人間関係の問題だと思っていたことが、実は業務の進め方や情報共有の方法を少し工夫するだけで改善するケースも少なくありません。
対処法⑥ 職場以外の居場所を持つ
仕事だけが生活の中心になると、職場での出来事を必要以上に大きく受け止めてしまうことがあります。
そのため、職場以外にも安心できる居場所を持つことをおすすめします。
- 家族や友人と話す時間をつくる
- 趣味を楽しむ
- 地域の活動に参加する
- 就労定着支援を利用する
- 就労移行支援事業所へ相談する
「仕事だけが自分のすべてではない」と感じられるようになると、人間関係によるストレスも軽減しやすくなります。
対処法⑦ 限界を感じたら我慢し続けない
人間関係の悩みは、時間が解決する場合もあります。
しかし、次のような状況が続く場合は注意が必要です。
- 毎日出勤するのが怖い
- 眠れない日が続いている
- 食欲がない
- 休日も仕事のことばかり考えてしまう
- 体調が悪化している
このような状態では、「もう少し頑張れば何とかなる」と無理を続けるよりも、早めに相談することが大切です。
支援員や主治医、家族と話し合いながら、今後の働き方を考えていきましょう。
無理を続けることが正解ではありません。
長く働き続けるためには、「休む」「相談する」「環境を変える」という選択肢を持つことも大切です。
支援員として伝えたいこと
私が支援の現場で感じるのは、人間関係で悩む方の多くが、とても真面目で責任感が強いということです。



「迷惑をかけたくない」「嫌われたくない」という思いから、自分の気持ちを後回しにしてしまい、結果として大きなストレスを抱えてしまうケースを何度も見てきました。
もちろん、職場では協調性も大切です。
しかし、自分だけが我慢し続ける働き方は長続きしません。
困ったときは相談し、自分に必要な配慮を伝えながら働くことも、障害者雇用では大切なスキルの一つです。
「人間関係で悩まない職場」を探すことよりも、「困ったときに相談できる職場」を選ぶことが、長く働くためのポイントだと私は考えています。
よくある質問(Q&A)
Q&A
- 障害者雇用でも職場で孤立することはありますか?
-
あります。ただし、孤立しそうなときに相談できる体制が整っている企業も多いため、一人で抱え込まず早めに相談することが大切です。
- 上司と合わない場合はどうすればいいですか?
-
まずは仕事内容や指示の受け方など、具体的に困っている点を整理しましょう。そのうえで、人事担当者や障害者職業生活相談員などへ相談することで改善する場合があります。
- 人間関係が原因で転職した方がいい場合もありますか?
-
相談や環境調整を行っても改善せず、心身の不調が続く場合は、転職も一つの選択肢です。ただし、感情だけで判断せず、支援員や主治医など第三者と相談しながら進めることをおすすめします。
- 人間関係の悩みは、やはり自分から上司に言わないとだめですか?
-
定着支援を使っている場合は、先に支援員に話すのもおすすめです。場合によっては支援員から話す方がいいこともありますし、伝え方もいろんなパターンが想定されます。
まとめ|一人で抱え込まず、相談しながら働き続けよう
障害者雇用でも、人間関係の悩みは決して珍しいものではありません。
しかし、多くの場合は、相談のタイミングや関わり方を工夫することで改善できる可能性があります。
相手を変えようとするのではなく、自分が相談しやすい環境をつくること、必要な配慮を伝えること、そして一人で抱え込まないことが大切です。
もし、人間関係の悩みから体調に影響が出ている場合は、「我慢する」ことを優先せず、支援員や主治医、企業へ相談しながら、自分に合った働き方を考えていきましょう。
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