「障害者雇用で働きたいけれど、どんな支援制度があるのか分からない」「障害年金や自立支援医療は利用できるの?」「就労移行支援ってどんな人が対象なの?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
障害のある方が安心して働き続けるためには、自分に合った支援制度を知り、必要に応じて活用することが大切です。しかし、制度は種類が多く、それぞれ利用条件や目的が異なるため、初めて調べる方にとっては分かりにくい部分もあります。
私はこれまで就労移行支援・自立訓練・定着支援事業所で支援員として勤務し、多くの精神障害・発達障害のある方の就職支援や職場定着をサポートしてきました。その経験から感じるのは、「制度を知っている人ほど、働き続けやすい」ということです。
この記事では、障害者雇用で利用できる代表的な支援制度を支援員の視点から分かりやすく解説します。それぞれの制度の特徴や利用できる人、活用するメリットまで紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
障害者雇用で利用できる主な支援制度一覧
まずは、障害者雇用で利用される代表的な制度を一覧で確認してみましょう。
| 制度 | 対象 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 障害者手帳 | 障害のある方 | 障害福祉サービスや障害者雇用などの利用 |
| 障害年金 | 一定以上の障害状態 | 生活費を支える年金制度 |
| 自立支援医療 | 精神疾患などで通院中の方 | 医療費自己負担を原則1割へ軽減 |
| 就労移行支援 | 就職を目指す障害者 | 就職訓練・面接練習・職場実習 |
| 障害者就業・生活支援センター | 働いている・働きたい方 | 仕事と生活の相談支援 |
| 地域障害者職業センター | 障害のある求職者 | 職業評価・ジョブコーチ支援 |
それぞれ役割が異なるため、自分の状況に合わせて組み合わせて利用することが大切です。
①障害者手帳
障害者手帳は、障害があることを公的に証明するための手帳です。
精神障害の方は精神障害者保健福祉手帳、発達障害の方も一定の条件を満たせば精神障害者保健福祉手帳を取得できる場合があります。
障害者手帳を取得することで、障害者雇用枠への応募や各種福祉サービス、税金の控除、公共料金の割引などさまざまな制度を利用できます。
障害者手帳で利用できる主な制度
- 障害者雇用への応募
- 障害福祉サービス
- 税金の控除
- 公共交通機関の割引(一部自治体)
- 携帯料金などの割引
- 各自治体独自の支援制度
支援員障害者手帳を取得すると「会社に知られてしまうのでは?」と心配される方もいますが、本人が提出しない限り会社へ自動的に通知されることはありません。
障害者雇用で働く場合は、手帳が応募条件となる求人も多いため、就職を考えている方は早めに取得を検討するとよいでしょう。
等級や障害年金の仕組みについては厚生労働省の[年金制度の仕組みと考え方]第12 障害年金にも記載されています。
障害年金については以下にも詳しくまとめました。
②障害年金
障害年金は、病気や障害によって仕事や日常生活に支障がある方を支える公的年金制度です。
「働いているから受給できない」と思われる方も多いですが、障害の状態によっては働きながら受給している方も少なくありません。
| 種類 | 対象 |
|---|---|
| 障害基礎年金 | 国民年金加入者 |
| 障害厚生年金 | 厚生年金加入者 |
受給できるかどうかは診断名だけではなく、日常生活や仕事への影響、初診日、保険料納付状況など総合的に判断されます。
障害年金を受給している方からよくある質問
- 働き始めても年金はもらえる?
- 障害者雇用で働いても受給できる?
- 収入が増えると止まる?
これらは障害の等級や就労状況によって異なるため、年金事務所や社会保険労務士へ相談することをおすすめします。



生活費が不安だからと無理にフルタイム勤務を目指し、体調を崩してしまう方もいます。障害年金を活用しながら、自分に合った働き方を選ぶことも大切です。
参考:日本年金機構「障害年金」
③自立支援医療(精神通院医療)
精神科や心療内科へ継続して通院している方は、自立支援医療制度を利用できる可能性があります。
この制度を利用すると、精神科の通院や薬代などの自己負担額が原則3割から1割へ軽減されます。
| 対象 | 内容 |
|---|---|
| 精神疾患で継続通院する方 | 通院費・薬代などの自己負担軽減 |
継続的な通院が必要な精神障害・発達障害の方にとって、経済的な負担を大きく減らせる制度です。
対象となる主な疾患
- うつ病
- 双極性障害
- 統合失調症
- 不安障害
- 発達障害
- ADHD
- ASD



就職後も定期的な通院が必要な方は少なくありません。医療費を理由に通院を中断すると体調悪化につながることもあるため、自立支援医療は積極的に活用することをおすすめします。
参考:厚生労働省「自立支援医療制度」
④就労移行支援
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す障害のある方を対象とした福祉サービスです。
ビジネスマナーやパソコン訓練だけでなく、自己理解や職場実習、履歴書作成、面接練習、就職後の定着支援まで受けられます。
| 支援内容 | 具体例 |
|---|---|
| 就職準備 | 生活リズム・自己理解 |
| 訓練 | PC・ビジネスマナー |
| 就職活動 | 履歴書・面接練習・企業見学 |
| 職場実習 | 企業実習・職場体験 |
| 定着支援 | 就職後の相談・企業との調整 |



私自身、多くの利用者さんを支援してきましたが、長く働いている方ほど職場実習や自己理解にしっかり取り組んでいました。就職を急ぐよりも、自分に合う仕事を見つけることが結果的に長期定着につながります。
就労移行支援については以下の記事もおすすめです。
⑤障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
障害者就業・生活支援センター(通称:なかぽつ)は、仕事と生活の両面から支援を行う相談機関です。
「仕事は続けたいけれど生活面にも不安がある」「職場で困りごとがある」といった場合に相談できます。
| 主な支援内容 | 具体例 |
|---|---|
| 就職相談 | 求人探し、応募書類、面接相談 |
| 職場定着支援 | 企業との調整、職場訪問 |
| 生活相談 | 生活リズム、金銭管理、福祉制度 |
| 関係機関との連携 | 病院・就労移行支援・行政との情報共有 |



就職後に「仕事は何とか続いているけれど生活面が不安」という相談は非常に多くあります。
そのようなときは、企業だけで抱え込まず、障害者就業・生活支援センターを利用することで長く働き続けられるケースも少なくありません。
略してなかぽつとよく呼ばれますが、この呼び方をするのは失礼にあたるので注意が必要です。「就業・生活」の間に「・」、つまり間にポツがあることからナカポツと呼ばれているので、勤務している職員の人によっては嫌がる人もいます。
⑥地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは、障害のある方が自分に合った仕事を見つけられるよう専門的な支援を行っています。
ハローワークや就労移行支援事業所と連携しながら支援を受けることも可能です。
| 支援内容 | 具体例 |
|---|---|
| 職業評価 | 得意・不得意を客観的に整理 |
| 職業準備支援 | 働くためのトレーニング |
| ジョブコーチ支援 | 職場へ訪問し企業・本人を支援 |
| 企業支援 | 合理的配慮や職場環境の助言 |



企業へジョブコーチが入ることで、本人だけでなく企業側も安心して受け入れられるようになります。職場定着率の向上にもつながる重要な制度です。
ジョブコーチについえは詳しくは職業センターの職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援に記載されています。
支援制度は併用できる?
「障害年金を受給していると就労移行支援は利用できないの?」「障害者手帳と自立支援医療は同時に使える?」という質問を受けることがあります。
結論から言うと、多くの制度は目的が異なるため、条件を満たせば併用できます。
| 制度の組み合わせ | 利用可否 |
|---|---|
| 障害者手帳+障害年金 | ○ |
| 障害者手帳+自立支援医療 | ○ |
| 障害年金+就労移行支援 | ○ |
| 就労移行支援+定着支援 | ○ |
| 障害者雇用+障害年金 | 状態によって可能 |
ただし、障害年金については障害の状態や就労状況などによって判断されるため、詳細は年金事務所へ確認しましょう。
私の経験では「就労前に障害年金の申請」が完了していればもらえることも多いのですが、「就労後に申請」となるともらえないことが多くありました。
制度について困ったらどこへ相談すればいい?
制度は複雑で、一人で調べても分かりにくいことがあります。
迷ったときは、次のような相談機関を利用しましょう。
- 市区町村の障害福祉課
- 年金事務所
- ハローワーク障害者窓口
- 障害者就業・生活支援センター
- 地域障害者職業センター
- 就労移行支援事業所
自分一人で判断せず、専門家へ相談することで利用できる制度が見つかることも少なくありません。
支援員が考える「制度を上手に活用する3つのポイント」
① 困ってからではなく早めに相談する
体調を崩してから相談するよりも、「少し不安だな」と感じた時点で相談した方が解決しやすくなります。
② 制度だけに頼らず自己理解も深める
制度はあくまでもサポートです。自分の得意・苦手や配慮事項を理解しておくことが、長く働くためには欠かせません。
③ 支援機関を積極的に活用する
支援員や相談員は「困ったときだけ利用する人」ではありません。就職活動や職場定着まで一緒に考えてくれる心強い存在です。
よくある質問(FAQ)
Q&A
- 障害者手帳がなくても就労移行支援は利用できますか?
-
自治体の判断によっては、医師の診断書などで利用できる場合があります。詳しくはお住まいの自治体へ確認しましょう。
- 障害年金を受給しながら働くことはできますか?
-
可能な場合が多いです。ただし、障害の状態や働き方によって判断されるため、日本年金機構へ確認することをおすすめします。
- 就労移行支援は必ず利用した方がいいですか?
-
必ずではありません。しかし、働くことに不安がある方や自己理解を深めたい方、職場実習を経験したい方にはおすすめできる制度です。
まとめ|支援制度を知ることが長く働く第一歩
障害者雇用で長く働くためには、自分一人で頑張りすぎないことが大切です。
障害者手帳や障害年金、自立支援医療、就労移行支援などの制度を上手に活用することで、働きやすい環境を整えられます。
また、制度は一つだけではなく、複数を組み合わせることでより安心して生活や仕事を続けられるケースも多くあります。
「自分はどの制度を利用できるのだろう?」と迷ったら、一人で抱え込まず支援機関へ相談してみてください。
制度を正しく理解し、自分に合った支援を受けることが、無理なく長く働き続けるための第一歩になります。
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