「静かな場所で働きたいと伝えたのに理解されない」
「何度相談しても業務が改善されない」
「配慮をお願いすると“わがまま”と思われそうで怖い」
発達障害や精神障害のある方にとって、合理的配慮は安心して働き続けるために欠かせないものです。
しかし実際の職場では、
- 制度自体を理解していない
- 相談しても改善されない
- 配慮を伝えづらい空気がある
など、多くの悩みがあります。
支援員私自身、就労支援員として多くの企業や当事者の方と関わってきましたが、「もっと早く相談すればよかった」「一人で抱え込まなければよかった」と話される方は少なくありません。
この記事では、
- 合理的配慮がされない原因
- 職場への具体的な伝え方
- 改善しない場合の対応方法
- 外部相談先や転職の考え方
まで、支援現場の実例も交えながら分かりやすく解説します。
合理的配慮とは何か
合理的配慮とは、障害のある人が他の人と平等に社会参加できるよう、過度な負担にならない範囲で行う調整や支援のこと。
障害者差別解消法では、事業者に対して「障害者からの申し出があった場合、合理的配慮を提供する義務がある」と定められています。
- 静かな作業スペースの提供(感覚過敏への配慮)
- 指示を口頭ではなく文書で伝える(情報処理の困難への配慮)
- 勤務時間の柔軟な調整(体調の波への対応)
- メンタルヘルス支援の導入(不安障害やうつ病への配慮)
障害者差別解消法については内閣府のサイトにリーフレットもありますので、詳しくはこちらのサイトをご参照してください。
合理的配慮がされないときのよくある状況
実際に働く職場を見て、合理的配慮が不十分な例を紹介します。
- 上司や人事が制度を理解していない
合理的配慮の必要性や具体例を知らないため、対応が後回しになるケース。 - 配慮の申し出が「わがまま」と誤解される
特に精神障害や発達障害は外見から分かりづらいため、理解が得られにくい。 - 配慮の内容が曖昧で、実施されない
「配慮します」と言われても、具体的な行動が伴わない場合。



配慮をお願いすると自分の評価が下がりそうで不安です・・・。



障害者枠として働いている場合、合理的配慮は権利です。配慮を受けることで効率よく働けるのであれば、しっかり伝えることでお互いのメリットになります。
合理的配慮がされないことで起きやすい問題


合理的配慮が十分に受けられない状態が続くと、仕事だけではなく、心身にも大きな負担がかかります。
最初は「少し働きづらい」「ミスが増えた」程度でも、無理を続けることで二次障害や離職につながるケースも少なくありません。
実際に支援現場でも、「もっと早く相談すればよかった」と話される方は多くいます。
仕事のミスや遅刻が増える
発達障害や精神障害のある方は、環境の影響を受けやすい傾向があります。
例えば、
- 周囲の音で集中できない
- 口頭指示だけだと内容を忘れる
- 急な予定変更で混乱する
- マルチタスクで頭が真っ白になる
などです。
これらは本人の努力不足ではなく、特性による部分も大きいため、適切な配慮がないとミスや業務負担が増えやすくなります。
また、以下の記事でも「仕事のミスを減らす工夫」を詳しく解説しています。
自己肯定感が下がりやすくなる
合理的配慮が受けられない状態が続くと、
「自分が悪い」
「頑張りが足りない」
「周りはできているのに…」
と自分を責めやすくなります。
しかし実際には、働く環境とのミスマッチによって能力を発揮できていないケースも非常に多いです。
私が支援している方でも、環境調整だけで業務効率が大きく改善し、自信を取り戻した方を多く見てきました。
体調悪化や離職につながることもある
無理を続けることで、
- 不眠
- 強い疲労感
- 抑うつ状態
- 出勤困難
などにつながる場合もあります。



特に「配慮をお願いしたのに理解されなかった」という経験は、精神的ダメージも大きくなりやすいです。
そのため、「まだ頑張れる」と無理を続けるよりも、早めに相談することが非常に重要です。
対応ステップ:合理的配慮を求めるための行動
働く側が長くよりよく働き続けるためワーキングメモリが低いとどうなる?日常生活への影響と対策にも、合理的配慮に向けて行動する必要があります。
具体的には以下のステップとなります。
「どんな場面で困っているか」「どんな配慮があると助かるか」を整理しましょう。
発達障害や精神障害の特性に応じて、以下のような視点が役立ちます。
抽象的な表現では伝わりづらいため、以下のように具体的に伝えることが重要です。
NG例:「もう少し配慮してほしい」
OK例:「来客対応の言葉でどうしても集中できないので、場所を〇〇に変えて頂けませんか」
口頭だけでなく、記録として残すことで後のトラブル防止になります。特に職場で困っている際は従業員側が本当にしんどい場面がほとんどのため、「言った」「言っていない」問題は起こりやすく、口頭だけではお互いが分からなくなってしまいます。
直属の上司だけでなく、以下のような相談先も活用できます。
- 産業医(体調や働き方の相談)
- 人事部(制度や配置転換の相談)
- 障害者職業センター(職場適応支援)
- ハローワークの障害者支援窓口



ADHD・ASDに共通する“実行機能の弱さ”とは?原因と対策を紹介の記事もおすすめです。
合理的配慮を伝えるときに意識したいポイント
合理的配慮は「ただ困っていることを伝える」だけではなく、「どうすれば働きやすくなるか」を具体的に共有することが重要です。
実際の支援現場でも、伝え方によって職場の反応が大きく変わることがあります。
「できない」ではなく「どうすればできるか」を伝える
例えば、
- 「電話対応はできません」
- 「マルチタスクは無理です」
だけだと、企業側も対応方法が分からず困ってしまいます。
そのため、
- 「電話対応は件数を減らしてもらえると助かる」
- 「指示を一つずつ頂けると対応しやすい」
- 「静かな場所だと集中しやすい」
など、“対応方法”まで伝えることが大切です。
感情的になりすぎないことも大切
仕事でつらい状況が続くと、どうしても感情的になってしまうことがあります。
ただ、企業側も「何に困っているのか」「何を調整すればよいのか」が分からないと動きにくいです。
そのため、
- 困っている場面
- 頻度
- 必要な配慮
- 改善したい気持ち
を整理して伝えることで、話し合いが進みやすくなります。
対応が拒否されたときの選択肢


もしも人事や上司が対応を拒否した場合は外部の機関に相談すること方法もあります。
外部機関に相談する
合理的配慮の拒否は、障害者差別解消法に抵触する可能性があります。以下の機関に相談することで、改善のきっかけになることがあります。
外部機関に相談すると上司との関係性が悪化することもありますので、まずは上司などに相談して解決しない場合にしましょう。
就労移行支援や転職も視野に入れる
どうしても改善が見込めない場合は、障害者雇用に理解のある企業への転職や、就労移行支援事業所の利用も選択肢です。
就労移行支援の中でも定着支援事業を行っている企業であれば、就職後最大3年間企業との仲立ちやフォローに入っていただけます。
就労移行支援とは?
就労を希望する65歳未満の障害のある方に対して、生産活動や職場体験などの機会の提供を通じた就労に必要な知識や能力の向上のために必要な訓練、就労に関する相談や支援を行います。
このサービスでは、一般就労に必要な知識・能力を養い、本人の適性に見合った職場への就労と定着を目指します。 参考:WAMNET
心が折れそうなときのセルフケア
合理的配慮がされない状況は、精神的にも大きな負担になります。以下のようなセルフケアを意識しましょう。
- 信頼できる人に話す(家族・支援者・友人)
- 障害当事者のコミュニティに参加する
- カウンセリングや精神科医のサポートを受ける
- 自分を責めない。「制度が未整備なだけ」と考える
私が実際に支援していると、自己肯定感が低かったり「相手に申し訳ない」と思って溜め込んでいることが多いです。
しかし実際の企業は「本音を聞きたい」と思っていることが多く、何が困ってどうしてほしいかをしっかり伝えることで、お互い気持ちよく働くことに繋がります。
まとめ:合理的配慮は「お願い」ではなく「権利」
合理的配慮は、障害のある方が安心して働き続けるための大切な権利です。
しかし実際には、
- 「相談しても理解されない」
- 「配慮をお願いしづらい」
- 「周りに迷惑をかけそうで言えない」
など、一人で悩みを抱え込んでしまう方も少なくありません。
特に発達障害や精神障害は外見では分かりづらいため、「頑張り不足」と誤解されてしまうこともあります。
ですが、本当に必要なのは“無理して周囲に合わせ続けること”ではなく、自分に合う環境や働き方を見つけることです。
私自身、就労支援員として多くの方を支援してきましたが、
- 業務内容を少し調整した
- 指示方法を変えた
- 相談できる相手を作った
など、小さな環境調整だけで働きやすさが大きく改善したケースを数多く見てきました。
もし今、
- 仕事のミスが続いている
- 職場で孤立している
- 相談しても改善されない
- 毎日「もう限界かもしれない」と感じている
のであれば、一人で抱え込まず、支援機関や外部相談先を活用することも大切です。
「今の職場でどう働くか」だけではなく、
- 配慮を受けながら働ける環境を探す
- 支援を受けながら転職活動する
- 自分に合う仕事を整理する
という視点を持つことで、働き方の選択肢は大きく広がります。
焦らず、自分に合う働き方を少しずつ見つけていきましょう。
