「職場の人間関係がつらい」「仕事を辞めたいけれど、誰に相談すればいいか分からない」「配慮をお願いしたいけれど、どう伝えればいいのだろう」。
障害者雇用で働いている方や、これから就職を目指す方から、このような相談を受けることは少なくありません。
一人で悩み続けると、ストレスが大きくなり、体調を崩したり、突然退職してしまったりすることもあります。
しかし、障害者雇用では相談できる窓口が一つではありません。
職場の担当者だけでなく、就労移行支援事業所や就労定着支援、ハローワーク、主治医など、状況に応じて相談先を選ぶことができます。
私は就労支援員として、多くの方の就職や職場定着を支援してきました。その中で感じるのは、「早めに相談できた人ほど長く働き続けられる」ということです。
この記事では、障害者雇用で相談できる窓口や、それぞれの役割、相談するタイミングについて、支援員の視点から分かりやすく解説します。
一人で抱え込まないことが何より大切
障害者雇用では、「迷惑をかけたくない」「自分が我慢すればいい」と考え、一人で悩みを抱えてしまう方が少なくありません。
しかし、多くの企業では、困ったときに相談してもらうことを前提として支援体制を整えています。
支援員実際に、支援の現場でも、相談が早かった方ほど環境調整がしやすく、長く働き続けられるケースを多く見てきました。
「相談することは迷惑ではなく、長く働くための大切な行動」と考えることが重要です。
相談内容によって相談先は変わる
相談先は一つではありません。
悩みの内容によって、相談しやすい相手が異なります。
| 困っていること | 相談先 |
|---|---|
| 仕事内容・業務量 | 直属の上司 |
| 配慮事項 | 人事担当者・障害者職業生活相談員 |
| 人間関係 | 上司・人事・就労定着支援 |
| 体調 | 主治医・産業医 |
| 転職や今後の働き方 | 就労移行支援・ハローワーク・転職エージェント |
「誰に相談すればいいか分からない」という場合は、まず就労支援員や就労定着支援へ相談すると、一緒に整理してもらえます。
相談先① 直属の上司
仕事の進め方や業務内容について困ったときは、まず直属の上司へ相談することが基本です。
例えば、次のような内容は上司へ相談すると改善しやすいでしょう。
- 仕事量が多すぎる
- 業務の優先順位が分からない
- 指示が理解しづらい
- 仕事の進め方について相談したい
上司は日々の仕事を管理しているため、業務内容の調整や指示方法の見直しができる場合があります。
「忙しそうだから相談しにくい」と感じることもありますが、我慢を続けて体調を崩してしまう方が、結果として職場にも大きな影響を与えてしまいます。
相談先② 人事担当者・障害者職業生活相談員
障害者雇用では、企業によって人事担当者や障害者職業生活相談員が配置されていることがあります。
障害者職業生活相談員とは、障害のある従業員が働きやすいように相談や支援を行う担当者です。
次のような相談に向いています。
- 配慮事項を見直したい
- 異動について相談したい
- 人間関係で悩んでいる
- 働き方について相談したい
直属の上司には話しづらい内容でも、第三者的な立場で話を聞いてもらえる場合があります。
相談先③ 就労定着支援
就労定着支援は、就職後も安心して働き続けられるようサポートする福祉サービスです。
利用できる期間には一定の条件がありますが、利用中であれば職場と本人の間に入り、調整役として支援してくれます。
例えば、次のような相談ができます。
- 職場で困っていること
- 配慮事項の整理
- 企業との面談への同席
- 今後の働き方の相談
早めに相談することで、大きなトラブルになる前に対応できるケースが多くあります。
相談先④ 就労移行支援事業所
就職前に利用していた就労移行支援事業所は、就職後もしばらく相談に乗ってくれることがあります。
事業所によって対応は異なりますが、「卒業したから相談できない」と思わず、一度連絡してみるとよいでしょう。
就職までの経緯や障害特性を理解している支援員だからこそ、状況に応じた具体的なアドバイスを受けられることがあります。
就労移行支援や職場実習について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。


相談先⑤ ハローワーク
転職を考え始めた場合や、現在の職場で働き続けることが難しいと感じた場合は、ハローワークも相談先の一つです。
障害者専門窓口を設置しているハローワークでは、障害特性に配慮した就職相談や求人紹介を受けることができます。
例えば、次のような相談が可能です。
- 自分に合った求人を探したい
- 今の職場を辞めるべきか相談したい
- 障害者雇用の求人状況を知りたい
- 応募書類や面接について相談したい
退職を決めてから相談するのではなく、「働き続けるか迷っている段階」で相談することもできます。
相談先⑥ 主治医・医療機関
体調面で不安がある場合は、主治医へ相談することも重要です。
例えば、次のような変化がある場合は、早めに受診しましょう。
- 眠れない日が続いている
- 朝起きられない
- 食欲が落ちている
- 仕事へ行こうとすると強い不安がある
- 休日も疲れが取れない
こうした状態を放置すると、症状が悪化し、休職や退職につながる可能性があります。
主治医は症状の変化だけでなく、働き方や通院頻度、服薬についても一緒に考えてくれる存在です。
必要に応じて、企業へ提出する診断書や意見書について相談できる場合もあります。
相談先⑦ 家族や信頼できる人
職場のことは職場だけで解決しようと考えてしまう方もいます。
しかし、家族や友人など、安心して話せる人へ相談することも大切です。
話すだけでも気持ちが整理され、「思っていたほど深刻ではなかった」と感じることもあります。
一方で、感情だけで判断してしまうと、「すぐ辞めた方がいい」という結論になってしまうこともあります。
そのため、家族だけでなく、支援員や主治医など専門職にも相談しながら判断することをおすすめします。
相談するときに伝えたい4つのポイント
相談する際は、「困っています」と伝えるだけでは、相手も具体的な対応を考えにくいことがあります。
次の4つを整理して伝えると、より適切な支援につながりやすくなります。
| 伝える内容 | 具体例 |
|---|---|
| いつ | 先週から、毎週月曜日など |
| 何が起きたか | 仕事量が増えた、人間関係で困ったなど |
| どう困っているか | 集中できない、眠れない、不安が強いなど |
| どうしてほしいか | 相談したい、配慮をお願いしたいなど |
事実を整理して伝えることで、相談相手も状況を理解しやすくなります。
相談しても改善しない場合はどうする?
相談したからといって、すべての問題がすぐ解決するわけではありません。
しかし、一度相談して改善しなかったからといって、すぐに退職を決める必要もありません。
例えば、次のような流れで考えると判断しやすくなります。
- 直属の上司へ相談する
- 人事担当者や障害者職業生活相談員へ相談する
- 就労定着支援や支援員へ相談する
- 主治医へ相談する
- それでも改善しない場合は転職も検討する
一人だけに相談するのではなく、複数の立場の人から意見を聞くことで、より冷静に判断しやすくなります。
支援員として伝えたいこと
相談することは「弱さ」ではなく、「長く働くための力」です。
支援の現場では、「もっと早く相談してくれれば、一緒に対応を考えられたのに」と感じる場面が少なくありません。



一方で、早い段階で相談できた方は、仕事内容や配慮事項の調整、人間関係の改善につながり、長く働き続けられているケースを多く見てきました。
障害者雇用では、「一人で頑張ること」が評価されるわけではありません。
必要なタイミングで相談し、周囲と協力しながら働くことも、大切な社会人としての力の一つです。
困ったときには、「相談してもいい」と自分に許可を出してあげてください。
よくある質問(Q&A)
Q&A
- 相談すると評価が下がることはありませんか?
-
適切なタイミングで相談することは、評価を下げる行動ではありません。むしろ、問題を一人で抱え込んで大きくしてしまう方が、業務へ影響することがあります。
- 上司へ相談しにくい場合はどうすればいいですか?
-
人事担当者や障害者職業生活相談員、就労定着支援など、別の相談先を活用しましょう。一人だけに相談する必要はありません。
- 転職するか迷っています。誰へ相談するのがいいですか?
-
まずは就労支援員や就労定着支援、ハローワークなどへ相談することをおすすめします。現在の職場で改善できる可能性も含めて、一緒に整理してもらえます。
- 相談したいけど言葉がうまくまとまりません。
-
多くの方が、うまく言えずに悩んでいます。話す内容をしっかりと伝えるためにも、事前にメモしておくことがおすすめです。
まとめ|一人で悩まず、相談できる人を増やそう
障害者雇用では、困ったときに相談できる窓口が複数あります。
直属の上司、人事担当者、障害者職業生活相談員、就労定着支援、就労移行支援事業所、ハローワーク、主治医など、それぞれ役割が異なります。
「誰に相談すればいいか分からない」と悩んだときは、一人で抱え込まず、まずは相談しやすい相手へ話してみましょう。
早めの相談は、問題を大きくしないだけでなく、長く安心して働き続けることにもつながります。
以下の記事もおすすめです。
