「定着支援を受けているけれど、支援員に悩みを相談できない」
「これくらいのことを相談してもいいのだろうか」
「支援員が忙しそうで、迷惑をかけたくない」
障害者雇用で働き続けるなかで、このように感じていませんか?
就職後の定着支援では、仕事や人間関係、体調面など、職場で困っていることを支援員に相談できます。しかし、定着支援を利用しているからといって、誰もが気軽に悩みを話せるわけではありません。
私は障害福祉の現場で、就職後の定着支援に携わってきました。そのなかで、相談したいことがあっても遠慮してしまったり、相談するタイミングを逃してしまったりするケースを経験しています。
支援員相談できない理由は、人によってさまざまです。本人が相談しようと努力するだけでなく、支援員側にも相談しやすい関係をつくる工夫が求められます。
この記事では、定着支援を受けているのに相談できない理由と、相談のハードルを下げる方法について、現場での支援経験を踏まえて解説します。
また、もし定着支援の説明を見たい方は以下の記事を先に見ましょう。
定着支援を受けていても相談できないことはある
定着支援は、就職後に仕事を続けるうえで困っていることを相談し、必要に応じて職場との調整や対応を考えるための支援です。
例えば、次のような悩みが相談の対象になります。
- 上司や同僚との人間関係がうまくいかない
- 仕事の量や進め方について困っている
- 職場で必要な配慮が受けられていないと感じる
- 体調やストレスの変化が気になっている
- 職場に不満があるものの、誰に話せばよいか分からない
- 今の仕事を続けられるか不安になっている
ただし、こうした悩みがあっても、すぐに支援員へ相談できるとは限りません。
「自分で解決するべきだ」「まだ我慢できる」「相談しても何も変わらない」と考え、ひとりで抱え込んでしまうことがあります。



定期的に面談を受けていても、面談の場で悩みを話せなかったり、そもそも自分のストレスに気づいていなかったりすることもあります。
定着支援を利用していることと、困ったときに相談できることは、必ずしも同じではありません。
だからこそ、相談できない理由を理解し、自分に合った相談方法を見つけることが大切です。
定着支援の支援員に相談できない7つの理由


1.これくらいのことなら相談しなくてもいいと思ってしまう
職場で気になることがあっても、「これくらいなら自分で何とかできる」「わざわざ相談するほどではない」と考えることがあります。
例えば、上司の言い方が気になったり、仕事の進め方に疑問を感じたりしても、一度の出来事なら我慢できるかもしれません。
しかし、似たようなことが何度も続くと、少しずつ不満やストレスが蓄積していきます。
最初は小さな悩みだったとしても、相談するタイミングを逃しているうちに、何から話せばよいのか分からなくなってしまうこともあります。
私が定着支援に携わるなかでも、小さな悩みの段階では相談せず、後になってから困りごとが大きくなっているケースがありました。
相談するかどうかを、悩みの大きさだけで判断する必要はありません。
同じことが何度も気になる、仕事に行くのが憂うつになってきたなど、少しでも変化を感じたら、早めに支援員に話してみましょう。
2.支援員が忙しそうで、迷惑をかけたくない
支援員が忙しそうに働いている姿を見ると、「今は相談しないほうがいい」「これ以上、仕事を増やしたくない」と遠慮してしまうことがあります。
特に、普段から相手に気を遣う人や、周囲に迷惑をかけることを避けたい人は、悩みがあっても自分から声をかけにくいかもしれません。



支援員が忙しそうに見えることと、相談を望んでいないことは同じではありません。
支援員は、利用者が働き続けるうえで困っていることを把握し、必要な支援につなげる役割を担っています。
もちろん、すぐに時間を取れない場合はあります。そのときは「いつなら相談できますか」と聞いたり、面談の予定を調整したりする方法もあります。
支援員側も、利用者が遠慮している可能性を考え、相談できる時間や連絡方法を分かりやすく伝えることが大切です。
3.相談しても解決しないと思っている
以前に相談したものの、状況が変わらなかった経験があると、「また相談しても同じだろう」と感じることがあります。
例えば、職場の人間関係について相談しても、相手の態度が変わらなかったり、希望した配慮がすぐには実現しなかったりするケースです。
そのような経験が続けば、相談する意味を感じられなくなるのも無理はありません。
ただし、相談した内容がすべて希望どおりに解決するとは限らない一方で、状況を整理することや、別の対応方法を考えることはできる場合があります。
例えば、職場の人の言動そのものを変えることが難しくても、指示の受け方を工夫する、上司に確認する方法を考える、業務上の配慮について相談するといった対応が考えられます。
以前の相談でうまくいかなかった場合は、「前回は相談したけれど、状況が変わらず困っている」と、そのまま伝えても構いません。
支援員側も、相談を受けて終わりにするのではなく、その後の状況を確認し、必要に応じて対応を見直すことが大切です。



障害者雇用の窓口では以下の記事でも解説しています。


4.定期面談に行っても、相談したいことを伝え忘れてしまう
定着支援では、定期的に事業所などで面談を行うことがあります。
しかし、面談の予定があるからといって、必ずしも悩みを伝えられるとは限りません。
面談当日になると、普段どおりの話をしているうちに時間が過ぎてしまったり、話そうと思っていたことを忘れてしまったりすることがあります。
また、いざ支援員を目の前にすると、何から話せばよいのか分からなくなる人もいるでしょう。
このような場合は、面談の前に困っていることをメモしておく方法がおすすめです。
例えば、次のような簡単なメモで構いません。
- 今、職場で困っていること
- いつ、どのような場面で困ったか
- 自分で試したこと
- 支援員に聞きたいこと
文章にまとめる必要はありません。単語や箇条書きだけでも、話したいことを思い出す手がかりになります。
5.就労移行支援で頑張っていた自分を見せていたため、困っている姿を見せにくい
就労移行支援などを利用して就職した人のなかには、訓練中に努力してきた姿や、できるようになったことを支援員に見せてきた人もいるでしょう。
そのため、就職後に困りごとが増えたとき、「頑張ってきたのに、うまくいっていないと思われたくない」「困っている自分を見せたくない」と感じることがあります。
就職できたことを喜んでくれた支援員だからこそ、心配をかけたくないと思う場合もあります。
しかし、就職後に困ることが出てくるのは、決して珍しいことではありません。
実際の職場では、訓練中には経験しなかった人間関係や業務上の課題に直面することがあります。働き始めてから、自分に必要な配慮や苦手な状況に気づくこともあります。
困りごとがあることは、これまでの努力が無駄だったという意味ではありません。
支援員にとっても、就職後にどのようなことに困っているのかを知ることは、必要な支援を考えるための大切な情報です。
「うまくいっていないと思われたくない」と感じるときこそ、今の状況を少しずつ伝えてみましょう。
6.ストレスがたまっていることに、自分でも気づいていない
相談できない理由は、必ずしも本人が意識して遠慮しているからとは限りません。
そもそも、自分のストレスがどのくらい蓄積しているのか、気づいていない場合もあります。
例えば、仕事で疲れていても「働いているのだから当然」と考えたり、職場で嫌なことがあっても「自分が気にしすぎているだけ」と受け止めたりすることがあります。
その結果、無理をしていることに気づかないまま、日々の仕事を続けてしまうのです。
次のような変化が続いていないか、時々振り返ってみましょう。
- 仕事に行く前から気持ちが重い
- 以前より疲れが取れにくい
- 休日も仕事のことを考えてしまう
- 些細なことでイライラしたり、落ち込んだりする
- 職場での出来事を家に帰ってからも引きずる
- 遅刻や欠勤が増えたり、出勤することがつらくなったりしている
これらは、ストレスに気づくための手がかりの一例です。すべてが当てはまる必要はありません。
定着支援の面談では、明確な問題が起きているときだけでなく、最近の体調や気持ち、仕事の疲れ具合などを振り返ることも役立ちます。
自分では大したことがないと思っていても、誰かと話すことで、負担が大きくなっていることに気づける場合があります。
また、障害者雇用の悩みでは以下の記事もおすすめです。


7.以前の相談で企業との関係がうまくいかず、支援員を信用できなくなった
定着支援で相談した結果、企業との関係がうまくいかなかった経験があると、次に相談することが怖くなる場合があります。
例えば、相談した内容が企業に伝わったことで気まずくなったり、期待していた対応につながらなかったりすると、「また同じことが起きるのではないか」と不安になるかもしれません。
支援員に相談すること自体に抵抗を感じ、困っていても話せなくなることもあります。
このような場合に、無理に支援員を信用しようとする必要はありません。
まずは、以前の相談で何がつらかったのか、どのような対応を望んでいたのかを整理することから始めてもよいでしょう。



また、企業にどの情報が共有されるのか不安な場合は、相談内容を企業に伝える必要があるのか、どのように伝えるのかを、事前に確認することも大切です。
支援員側も、企業との調整を行う前に、本人の意向を確認し、情報共有の目的や範囲を丁寧に説明する必要があります。
ただし、安全確保などのために関係機関との連携が必要となる場合もあるため、情報の取り扱いについては、支援の契約や個人情報の取り扱い方針なども含めて確認しましょう。
定着支援の支援員に相談できないときの5つの対処法


相談できない理由が分かっても、すぐに行動するのは難しいかもしれません。
ここからは、相談のハードルを下げるために試せる方法を紹介します。
1.小さな悩みのうちに伝える
相談するときは、問題が大きくなってからでなくても構いません。
「上司の言い方が少し気になった」「仕事の進め方が分からず戸惑った」など、まだ深刻ではないと感じることでも、気になった段階で話してみましょう。
小さな悩みを共有しておけば、支援員も本人の状況を把握しやすくなり、必要に応じて早めに対応を考えられます。
実際に定着支援を行うなかでも、早い段階で困りごとを共有できると、問題が大きくなる前に対応できる場合がありました。
もちろん、すべての問題が早期に解決するわけではありません。それでも、ひとりで抱え込む前に状況を整理することには意味があります。
2.定期面談を待たず、電話やメールで連絡する
定着支援の面談が月に一度など、定期的に設定されている場合、次の面談まで悩みを抱え続けてしまうことがあります。
しかし、相談方法は定期面談だけとは限りません。利用している支援機関の対応範囲や連絡方法を確認したうえで、電話やメールなどで相談できる場合もあります。
例えば、次のような短い連絡でも構いません。
「職場で少し困っていることがあります。次の面談まで待たずに相談したいのですが、時間を取っていただくことはできますか?」
詳しい事情を最初からすべて説明する必要はありません。
まずは相談したいことがあると伝え、支援員と話せるタイミングを調整してみましょう。
3.面談前に困っていることをメモしておく
面談の場で話したいことを忘れてしまう人には、事前のメモが役立ちます。
メモは、きれいな文章にする必要はありません。スマートフォンのメモ帳や紙に、思いついたことを書いておくだけでも十分です。
例えば、次のような形式がおすすめです。
- 困っていること:仕事の指示が分かりにくい
- 困る場面:複数の仕事を頼まれたとき
- 今の気持ち:何から始めればよいか分からず焦る
- 自分で試したこと:優先順位を確認するようにした
- 相談したいこと:仕事の順番を確認する方法を考えたい
このように整理しておくと、支援員に状況を説明しやすくなります。
また、すべてを話すのが難しい場合は、メモをそのまま見せても構いません。
4.相談して不安になったことや、支援員への不満も伝える
支援員に相談したことで、企業との関係が悪化したり、思っていた対応と違ったりした場合は、その経験を伝えることも大切です。
「前回の相談のあと、職場で気まずくなったので、今回は企業に伝える前に相談したいです」
「以前お願いしたことがうまくいかなかったので、今回は別の方法を考えたいです」
このように、何が不安なのかを具体的に伝えると、支援員も今後の対応を考えやすくなります。
支援員に不満を伝えることは、支援を拒否することと同じではありません。むしろ、安心して相談できる関係をつくるために必要な話し合いとなる場合があります。
ただし、伝えることで危険や強い不利益が生じるおそれがある場合は、無理に一人で直接伝えようとせず、別の相談窓口や信頼できる人に相談することも検討してください。
5.支援員を「すべて解決してくれる人」ではなく、一緒に考える相手と捉える
「相談したら、問題を解決してもらわなければならない」と考えると、相談するハードルが高くなることがあります。
しかし、相談したからといって、すべての問題がすぐに解決するわけではありません。
職場の人間関係や業務上の問題など、本人の希望だけでは変えられないこともあります。
それでも、支援員と話すことで、自分が何に困っているのかを整理したり、対応の選択肢を考えたりできる場合があります。



例えば、すぐに企業へ相談するのではなく、まず本人の話を聞いて状況を整理することもできます。
「まだどうしたいのか分からないけれど、話を聞いてほしい」
このような相談でも構いません。
支援員は、すべてを代わりに解決する人ではなく、本人が働き続けるために必要な方法を一緒に考える相手でもあります。
支援員側にも、相談しやすい関係をつくる工夫が必要
ここまで、本人が相談するための工夫を紹介してきました。
ただし、相談できないことを、すべて本人の努力不足として考えるべきではありません。
支援員側にも、本人が悩みを伝えやすい関係をつくるための工夫が必要です。
相談してほしいことを、普段から具体的に伝える
「困ったらいつでも相談してください」と伝えるだけでは、本人が相談してよい範囲を判断できない場合があります。
例えば、「仕事のやり方で少し迷ったこと」「上司の言い方が気になったこと」「体調がいつもと違うと感じたこと」など、どのようなことを相談してよいのか具体的に伝えると、相談のきっかけになります。
また、相談を受けた際には、すぐに解決策を提示することだけを優先せず、まず本人の話を聞く姿勢も大切です。
忙しいときも、相談できるタイミングを伝える
支援員が忙しいとき、本人が「今は話しかけないほうがよい」と感じることがあります。
すぐに対応できない場合でも、「今は対応が難しいので、今日の午後に話しましょう」など、次に相談できるタイミングを具体的に伝えると、本人は安心しやすくなります。
企業との情報共有について、本人の意向を確認する
本人が支援員に相談できない理由の一つに、「相談した内容が企業に伝わるのではないか」という不安があります。
そのため、企業との調整が必要な場合には、何を、どのような目的で、どの範囲まで共有するのかを丁寧に説明することが大切です。
本人の意向を確認しながら対応を考えることで、安心して相談できる関係につながります。
もちろん、支援員には関係機関との連携が求められる場面もあります。だからこそ、情報共有の取り扱いを事前に説明し、本人が不安を感じている点を確認することが重要です。
定着支援を受けているのに相談できないときは、一人で抱え込まないで
定着支援を受けていても、支援員に相談できないことはあります。
相談するほどのことではないと思ったり、支援員に遠慮したり、以前の経験から信用できなくなったりと、その理由は人によって異なります。
しかし、相談できない状態が続くと、職場での悩みや不満が大きくなり、仕事を続けることが難しくなる場合があります。
一方で、早い段階で困りごとを共有できれば、問題が大きくなる前に対応を考えられることがあります。



まずは、小さな悩みを伝える、面談前にメモを用意する、電話やメールで相談の時間を調整するなど、自分ができそうな方法から試してみましょう。
また、支援員に相談しても安心できない場合や、相談することで不利益が生じると感じる場合は、無理に一人の支援員だけに頼る必要はありません。事業所の管理者や別の相談窓口など、ほかの相談先を検討することもできます。
定着支援は、困りごとが大きくなってから利用するものではありません。働き続けるために、困っていることを一緒に整理し、必要な対応を考えるための支援です。
無理にすべてを話そうとしなくても大丈夫です。まずは「少し困っていることがある」と伝えるところから始めてみてください。
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