職場で、
「なんとなく周囲となじめない」
「会話についていけない」
「頑張っているのに浮いてしまう」
と感じたことはありませんか?
発達障害のある人にとって、職場は“仕事”だけではなく、“人間関係”でも強いストレスを感じやすい環境です。
実際の支援現場でも、
- 雑談に入れない
- 報告のタイミングが分からない
- 指示の受け取り方でズレが起きる
- ミスが続いて相談しづらくなる
などをきっかけに、少しずつ孤立してしまうケースを多く見てきました。
しかし、孤立は「性格の問題」ではなく、特性と環境のミスマッチによって起こることも少なくありません。
そのため、自分の特性を理解し、働き方や環境を調整することで、職場での負担を大きく減らせる可能性があります。
この記事では、
- 発達障害のある人が職場で孤立しやすい理由
- 孤立を防ぐための具体的な工夫
- 支援現場で実際に行われている配慮
- 働きやすくなるための考え方
を、現役の就労支援員の視点も交えながら分かりやすく解説します。
ADHD・ASDの困りごとガイドは以下にまとめています。

職場で孤立しやすい背景とは?
支援員発達障害のある人が職場で孤立してしまう背景には、単なる「性格の問題」では片づけられない構造的な要因があります。ここでは、孤立が起こりやすい理由を特性・環境・認識の3つの視点から整理してみましょう。
発達障害の特性が人間関係に影響する理由
発達障害の特性として、相手の言葉をうまく理解できなかったり、会話が噛み合わないことがよくあります。
よくある特性には以下の表にまとめました。
| 理由 | 詳細 |
| 非言語的なサインの読み取りが難しい | 表情・声のトーン・空気感など、言葉以外の情報を汲み取るのが苦手なことが多く、意図しない誤解を招くことがある。 |
| 言葉を文字通りに受け取りやすい | 比喩や遠回しな表現をそのまま解釈してしまい、相手の真意が伝わりにくい場面がある。 |
| 感覚過敏・鈍麻によるストレス反応 | 音・光・匂いなどに敏感すぎることで、周囲との関わりに疲れやすく、距離を置く傾向が出ることも。 |
| 注意の向け方や集中力に偏りがある | 相手の話に集中できなかったり、逆に自分の関心に没頭しすぎて会話が噛み合わないことがある。 |
| 場面に応じた振る舞いの切り替えが難しい | フォーマルとカジュアルの使い分けや、状況に応じた言動の調整が苦手で、違和感を持たれやすい。 |
また、発達障害の方は「実行機能」や「ワーキングメモリ」の影響によって、会話や業務整理に苦労することも少なくありません。
特に、
- 話を聞きながら整理する
- 複数の情報を同時に処理する
- 優先順位を切り替える
などで負担を感じる方も多いです。
詳しくは以下の記事でも解説しています。
周囲との認識ギャップが生む“見えない壁”
少しずつ障害に対する知名度が上がってきているものの、実際の企業の中には発達障害の特徴を知らない方や、「発達障害ってそもそもどんな特徴?」という方も少なくありません。
また、障害者枠ではなく一般企業で働いていると合理的配慮を受けることもできないため、業務面で支障が生まれることがよくあります。
合理的配慮とは?
障害者枠で採用される場合によく使われる言葉。企業としては〇〇は配慮しても大丈夫、労働者側としては〇〇を配慮してもらったら働きやすいというように、お互いのお願いや許容範囲が合意する配慮
孤立がもたらす心理的・業務的な影響
仕事をする上で多くのミスが発生したり、指示の行き違いが続くと、難しい業務や新しい業務を任されなくなってしまいます。そして、気づいたときには会社の中で孤立してしまっていることが多くあります。
これらは結果的に労働者の心理的負担となり、出勤しても孤立していると強く感じてしまうようになります。
また、仕事のミスや業務の混乱が続くことで、さらに孤立感が強くなるケースもあります。
特にADHDの方は、
- 抜け漏れ
- 確認ミス
- 優先順位の混乱
によって、自信を失ってしまうことも少なくありません。



以下の記事では、仕事のミスを減らす具体的な工夫を紹介しています。
発達障害のある人が職場で孤立しやすい“よくある場面”


発達障害のある人が職場で孤立してしまう背景には、単なるコミュニケーションの問題だけではなく、「周囲とのズレ」が積み重なっていくことがあります。
最初は小さな行き違いでも、それが繰り返されることで「話しかけづらい」「何を考えているか分からない」と思われ、少しずつ孤立につながってしまうケースも少なくありません。



実際の支援現場でも、本人は一生懸命頑張っているにも関わらず、周囲とのズレによって苦しんでいる方を多く見てきました。
ここでは、職場で特に起こりやすい“孤立につながる場面”を紹介します。
雑談に入れず、距離ができてしまう
発達障害のある人の中には、「業務の会話はできるけど雑談が苦手」という方が多くいます。
例えば、
- 話しかけるタイミングが分からない
- 興味のない話題だと何を返せばいいか分からない
- 相手の冗談を真に受けてしまう
- 複数人の会話についていけない
などがあります。
その結果、「無口」「冷たい」「関わりたくないのかな?」と誤解され、少しずつ距離ができてしまうことがあります。
ただ、これは性格ではなく、“情報処理の特性”による部分も大きいです。
そのため、無理に会話を盛り上げようとするよりも、まずは「挨拶」「お礼」「報告」など、小さなコミュニケーションを積み重ねることが大切です。
ミスや指摘が続き、自信を失ってしまう
仕事でミスや抜け漏れが続くと、「また怒られるかもしれない」という不安が強くなります。
すると、
- 質問できなくなる
- 相談を避ける
- 報告が遅れる
- 人との関わりを避ける
などの状態になり、結果として孤立につながってしまうことがあります。
特にADHDの方は、ワーキングメモリや実行機能の影響で、
- マルチタスク
- 優先順位の切り替え
- 情報整理
に苦労することも少なくありません。
そのため、「努力不足」と考えるのではなく、自分に合うやり方へ調整することが重要です。
周囲に相談できず、一人で抱え込んでしまう
発達障害のある人の中には、「迷惑をかけたくない」「怒られたくない」という気持ちが強く、一人で抱え込んでしまう方も多くいます。
しかし、実際には相談が遅れることで、
- 業務ミスの増加
- ストレスの蓄積
- 体調悪化
- 出勤困難
につながるケースもあります。



私自身、就労支援員として多くの方を支援してきましたが、早めに相談できる環境がある方ほど、長く安定して働ける傾向があります。
そのため、「困ったら相談していい」という環境づくりも非常に重要です。
孤立を防ぐための5つの工夫


孤立を防ぐためには、「自分を変える」よりも「自分に合った働き方や関わり方を見つける」ことが大切です。ここでは、実際の職場で取り入れやすい5つの具体的な工夫を紹介します。
①:自分の特性を“言語化”して伝える
自身の得意・不得意をしっかりと伝えることが必要です。
発達障害の障害者雇用で私が実際に支援員として同行している際に、企業側に伝えることとして意識していることです。
例えば「ルーティンワークは得意」「マルチタスクを行うと業務効率が大きく下がる」「静かな場所では集中できる」など。
人によって得意・不得意はあるのですが、発達障害の方は特にしっかりと伝えることで働きやすくなります。
②:小さなコミュニケーションの習慣化
職場では能力を評価されるとよく思われますが、実際に多くの人事の方と話したところ、業務スキルよりも「基本的な挨拶」や「お礼」「謝罪」「報告連絡相談」を重要視されることが多いです。
そのため、普段の何気ない挨拶を特に力を入れることで、例えミスが多くても孤立を防ぐことに繋がります。
③:業務の見える化と役割の明確化
その日に行うことをTODOリストで見える化したり、優先順位を書き出すことで円滑に業務を進めることができます。
手書きで書き出す方法でも、パソコンを使用してリスト化してもOKです。会社がM365に加入していれば、その中でTODOリストを作ることも出来ます。
④:信頼できる“味方”をつくる
上司や先輩など、相談できる味方がいると全く変わります。また、先輩じゃなくても後輩でもOKです。
相談や悩みごとを溜め込むのではなく、普段から相談したり、助け合ったりすることで必ずあなたの助けになります。
⑤:環境調整を遠慮せずに申し出る
発達障害の特性として、音や環境によって業務に大きく支障が出ることもあります。
例えば受付業務のようにお客さんが頻繁に来ると集中力が大きく下がったり、新しい業務がどんどん追加されると最初の指示が忘れてしまうなど。
これらは努力やTODOリストだけでは難しいこともあり、職場に相談して配慮してもらうことで働きやすくなります。
実際には、「配慮してほしい」と思っていても、
- どこまで伝えればいいか分からない
- わがままだと思われそう
- 相談のタイミングが難しい
と悩む方も少なくありません。



私が定着支援員として企業と仲立ちを行った経験も入れていますので、職場への伝え方や合理的配慮についての記事も見てみましょう。
支援者・職場側ができる配慮とは
孤立を防ぐための取り組みは、本人だけでなく職場全体の理解と協力があってこそ機能します。支援者や企業側ができる配慮や仕組みづくりについても、具体的に見ていきましょう。
孤立を防ぐ“仕組み”づくりの重要性
就労移行支援員や定着支援員、ジョブコーチなどを利用している場合、支援者から仲立ちしてもらうことができます。
そして、支援者側や職場側は本人が孤立しないよう、何ができるか考えることが必要です。
仕事のミスが続くと辛いのは働いている本人のため、業務内容や指示する教育担当の配置、業務場所など仕組みづくりを行います。
本人の声を聞く姿勢が信頼を生む
私が支援員としての体験談にもなるのですが、発達障害の方の成功事例としては、支援者や職場、本人が互いに話をしっかり聞こうとしている方の多くが成功します。
もちろん最初はうまくいかなかったり苦労したりしますが、周りも必ず協力的になります。
チーム全体での理解促進の工夫
本人は職場や支援員に本音で相談することが求められ、職場は合理的配慮として何を配慮し、どこは本人に頑張ってもらうかの見極めが必要です。また、支援者はその中間にあたるため、お互いが気持ちよく働けるよう、両方共の視点を持って動くことが求められます。



「今の職場ではどうしても働きづらい」
「孤立感が強く、毎日つらい」
という場合は、環境そのものを見直すことも大切です。
実際、就労移行支援や障害者雇用を活用することで、
- 働きやすい職場を見つけられた
- 配慮を受けながら働けるようになった
- 相談しながら安定して働けるようになった
という方も多くいます。
以下の記事では、働きやすい職場の探し方や、就職までの流れを解説しています。
まとめ|孤立しない職場づくりは“相互理解”から
発達障害のある人が職場で孤立してしまう背景には、
- コミュニケーションのズレ
- 感覚過敏や疲れやすさ
- マルチタスクの苦手さ
- 周囲との認識の違い
など、さまざまな要因があります。



そして、多くの場合は「性格の問題」ではなく、特性と環境のミスマッチによって起きています。
実際の支援現場でも、
「自分が悪いと思い込み続けていた」
「頑張っているのに理解されなかった」
「相談できず、一人で抱え込んでいた」
という方を多く見てきました。
しかし、
- 特性を整理する
- 働き方を工夫する
- 周囲へ相談する
- 環境調整を行う
ことで、働きやすさが大きく改善するケースも少なくありません。
特に、
- 自分に合う業務内容
- 相談しやすい上司
- 合理的配慮への理解
- 安心して働ける環境
は、長く働き続ける上で非常に重要です。
「自分がダメだから孤立している」のではなく、“合わない環境で無理を続けている”可能性もあります。
一人で抱え込みすぎず、支援機関や周囲を頼りながら、自分に合った働き方を探していくことが大切です。
