「障害者雇用で働いているのに、必要な配慮をしてもらえない」
「上司には伝えているはずなのに、現場の人には理解されていない」
「仕事量が増えて限界に近いけれど、周囲に迷惑をかけそうで相談できない」
障害者雇用で働くなかで、このような悩みを抱えていませんか?
障害者雇用では、障害の特性や体調に応じた合理的配慮が重要です。しかし、実際の職場では、配慮事項が現場まで十分に伝わっていなかったり、本人が困っていることをうまく伝えられなかったりする場合があります。
また、企業側にも業務上の事情があり、本人が希望する配慮と会社が対応できる範囲に違いが生じることもあります。
私はこれまで就労移行支援や自立訓練の支援員として、障害のある方の就職や職場定着に関わってきました。そのなかで、上司は配慮事項を把握していても現場では理解されていないケースや、本人が「大丈夫です」と答えてしまい、本当の困りごとが企業に伝わっていないケースなどを見てきました。
支援員この記事では、障害者雇用で配慮されないと感じる具体的なケースや原因、本人ができる対処法について解説します。
さらに、支援員が企業との間に入ってどのように調整するのか、配慮が改善されない場合にどう判断すればよいのかも紹介します。
今の職場で悩んでいる方は、一人で抱え込まず、今後の働き方を考える参考にしてみましょう。
障害者雇用でも配慮されないと感じることはある
障害者雇用では、障害の特性や本人の状況に応じて、働きやすい環境を整えることが大切です。
しかし、障害者雇用で採用されたからといって、職場の全員が配慮事項を理解し、常に適切な対応をしてくれるとは限りません。
例えば、採用時に上司と確認した配慮事項が現場の担当者に伝わっていなかったり、周囲の雰囲気が気になって必要な配慮を利用できなかったりすることがあります。
ここでは、実際の職場で起こりやすい状況を紹介します。
上司は理解していても現場には伝わっていない
配慮事項について上司や人事担当者には説明しているものの、実際に一緒に働く現場の人には十分に共有されていないケースがあります。
例えば、残業を控える必要があることを上司は把握していても、現場の人はその事情を知らない場合です。
周囲の人が残業しているなかで自分だけ先に帰ると、申し訳なさを感じたり、不満そうな表情を向けられたりすることがあります。
このような状況が続くと、本人は「配慮を受けているのに、周囲からよく思われていない」と感じ、必要な配慮を利用しづらくなってしまいます。
配慮を受けていても周囲の目が気になる
会社から配慮を受けられる環境が整っていても、本人が安心して利用できるとは限りません。
例えば、残業をしないことが配慮事項になっていても、周囲の人が忙しそうに働いていると、帰りづらさを感じることがあります。
また、自分だけ仕事量を調整してもらっている場合に、「周囲に負担をかけているのではないか」と気にしてしまう人もいます。



配慮は、単に会社が制度やルールを設ければよいというものではありません。本人が必要な配慮を安心して利用できるよう、職場内での理解や情報共有も大切です。
自分の困りごとを伝えられず、我慢してしまう
仕事で困っていることがあっても、上司や同僚に相談できずに我慢してしまう人もいます。
「忙しそうだから相談しにくい」
「これくらい自分で頑張らないといけない」
「何度も配慮をお願いすると迷惑かもしれない」
このように考え、本当は困っているのに「大丈夫です」と答えてしまうことがあります。
本人としては、表情や声のトーンから周囲に気づいてほしいと思っていても、相手が必ずしもその変化に気づけるとは限りません。
その結果、本人の負担が大きくなってから初めて問題が表面化することもあります。
障害者雇用で配慮されないと感じる5つのケース


ここでは、障害者雇用の職場で配慮が十分に行き届いていないと感じやすいケースを5つ紹介します。
① 仕事の速度や水準を高く求められる
自分では精いっぱい仕事に取り組んでいるつもりでも、周囲からさらに高い仕事の水準や作業速度を求められるケースです。
例えば、次のような状況が考えられます。
- 作業を正確に進めているのに、もっと早くするよう求められる
- 障害特性によって時間がかかる作業でも、周囲と同じペースを求められる
- 一度に多くの仕事を任され、処理しきれなくなる
- 自分の能力や体調に合わない業務量を求められる
本人としては、障害特性による苦手さを理解してほしいと感じるでしょう。



一方で、企業にも業務上必要な水準や納期があり、一定の仕事の成果を求める事情があります。
大切なのは、本人ができることと難しいことを整理し、どのような工夫があれば業務を進めやすくなるのかを話し合うことです。
例えば、作業速度を上げることが難しい場合でも、手順を整理する、優先順位を明確にする、確認の時間を確保するといった方法で改善できる可能性があります。
② 体調不良による欠勤について改善を求められる
体調不良で仕事を休んだ際に、会社から出勤状況の改善を求められるケースです。
本人としては、障害や体調の問題があるため、休むことも仕方がないと考えているかもしれません。
しかし、企業側にも安定して業務を進める必要があり、欠勤が続けば仕事の調整や周囲の負担が発生します。
そのため、企業から「できるだけ休まずに出勤できるようにしてほしい」と伝えられることもあります。
このような言葉を聞くと、本人は「障害者雇用なのに配慮されていない」と感じるかもしれません。
ただし、体調不良による欠勤があったからといって、企業側の意見がすべて不適切とは限りません。
大切なのは、欠勤したことだけを問題にするのではなく、安定して働くために何が必要なのかを一緒に考えることです。
例えば、次のような対応が考えられます。
- 体調を崩しやすい状況や原因を整理する
- 無理のない勤務時間や通勤方法を検討する
- 体調が悪くなった際の相談方法を決めておく
- 主治医や支援員と相談し、勤務の継続が可能か確認する
本人の努力だけで解決できないこともあるため、必要に応じて企業や支援機関と連携することが大切です。
③ 上司は理解しているのに現場の理解が得られない
上司には障害特性や配慮事項を伝えているものの、現場の人には十分に理解されていないケースです。
例えば、上司は本人が残業できないことを把握していても、現場の担当者にはその情報が伝わっていない場合があります。
また、本人の業務量を調整していることについて、周囲の人が事情を知らず、不公平に感じている可能性もあります。
このような状況では、本人が周囲の表情や態度を気にしてしまい、職場での居心地が悪くなることがあります。
ただし、障害名や病歴などの個人情報を職場の全員に共有する必要があるわけではありません。
本人の希望を確認したうえで、業務上必要な配慮事項をどの範囲まで共有するのか、会社と相談することが大切です。



合理的配慮は伝え方がとても重要なため、職場での合理的配慮がされないとき、どう対応すべきかの記事でも解説しています。
④ 残業の配慮があっても帰りづらい
会社から残業をしないよう配慮されていても、職場の雰囲気によって帰りづらくなるケースです。
例えば、定時になったら退勤することになっていても、周囲の人が忙しそうに残業していると、自分だけ帰ることに申し訳なさを感じてしまいます。
また、周囲から直接何かを言われていなくても、「自分だけ先に帰っていいのだろうか」と考えてしまう人もいます。
このような場合、本人の気持ちだけで解決するのは難しいことがあります。
上司に相談し、退勤時間について現場の担当者にも必要な範囲で共有してもらうなど、安心して退勤できる環境を整えることが大切です。
⑤ 気づかないうちに仕事が増え、キャパオーバーになる
最初は問題なく対応できていた仕事でも、少しずつ担当業務が増え、気づいたときには負担が大きくなっているケースです。
特に、複数の業務を同時に進めるマルチタスクが苦手な人にとって、仕事が増えることは大きなストレスにつながる場合があります。
例えば、次のような状況です。
- 予定していなかった仕事を次々に頼まれる
- 複数の上司や同僚から別々の指示を受ける
- どの仕事を優先すればよいか分からなくなる
- 仕事を断れず、すべて引き受けてしまう
- 気づいたときには処理しきれない量になっている
本人が仕事量の限界を伝えられていなかったり、企業側が負担の大きさに気づいていなかったりすると、状況は改善されにくくなります。
仕事が増えてきたと感じたら、限界になる前に業務量や優先順位について相談することが大切です。
配慮が十分に行き届かない4つの原因
配慮されないと感じる場合、必ずしも企業が本人の希望を無視しているとは限りません。
企業側の情報共有に問題がある場合もあれば、本人が困っていることをうまく伝えられていない場合もあります。



ここでは、配慮が十分に行き届かなくなる主な原因を4つ紹介します。
① 配慮事項の引き継ぎができていない
企業側で担当者や上司が変わった際に、配慮事項が十分に引き継がれていないケースがあります。
例えば、採用時に人事担当者と確認した配慮事項が、現場の管理者には伝わっていない場合です。
また、本人を担当する上司が変わったことで、以前の配慮内容が分からなくなってしまうこともあります。
配慮事項は、一度伝えれば終わりではありません。
担当者が変わっても必要な情報が共有されるよう、企業側で引き継ぎの方法を整えることが大切です。
② 口頭で伝えただけで、情報共有が不十分になっている
配慮事項を口頭で伝えただけでは、必要な人に情報が伝わらないことがあります。
例えば、上司に残業が難しいことを伝えていても、上司が不在の日には現場の担当者が事情を把握していない場合です。
また、口頭での説明は、時間が経つにつれて内容が曖昧になったり、一部の情報が抜け落ちたりする可能性もあります。
必要に応じて、配慮事項を文書にまとめたり、社内の情報共有方法を見直したりすることも検討しましょう。
③ 本人が仕事量や体調の限界を発信できていない
本人が仕事の負担を感じていても、それを企業側に伝えられていない場合があります。
例えば、仕事量が増えていることに気づいていても、「自分が頑張れば何とかなる」と考え、相談を後回しにしてしまうケースです。
本人としては、周囲に迷惑をかけたくないという気持ちがあるのかもしれません。
しかし、企業側が本人の負担を正確に把握することは簡単ではありません。
特に、表面上は問題なく仕事をしているように見える場合、本人が限界に近づいていることに気づかない可能性があります。
そのため、仕事量や体調に変化があったときは、早めに相談することが大切です。
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④ 「大丈夫です」と答えて本音を伝えられていない
上司や同僚から「仕事は大丈夫ですか?」と聞かれたとき、本当は困っているのに「大丈夫です」と答えてしまう人もいます。
例えば、次のような気持ちが隠れていることがあります。
- 忙しそうな上司に相談するのは申し訳ない
- 仕事ができないと思われたくない
- 何度も配慮をお願いすると嫌がられそう
- 自分の困りごとを説明するのが難しい
- 相手に気づいてほしいけれど、自分からは言い出せない
支援の現場でも、表情や声のトーンから気づいてほしいという気持ちに共感することがあります。
しかし、職場の人が本人の本音を必ず理解できるとは限りません。
「大丈夫です」と答えていると、相手は本当に問題がないと受け取ってしまう可能性があります。
困っていることがある場合は、少しずつでも言葉にして伝えることが大切です。
障害者雇用で配慮されないと感じたときの5つの対処法


配慮されないと感じたときは、我慢を続けるのではなく、状況を整理して周囲に相談することが大切です。
ここでは、本人が取り組みやすい対処法を5つ紹介します。
① 何に困っているのかを具体的に整理する
まずは、自分が何に困っているのかを整理してみましょう。
「配慮されていない」「仕事がつらい」と感じていても、そのままでは相手に状況が伝わりにくい場合があります。
例えば、仕事量が多いと感じているなら、次のように整理できます。
- いつ困ったのか:午後に複数の仕事を頼まれたとき
- どのような状況だったのか:3つの仕事を同時に進める必要があった
- 何が負担なのか:優先順位が分からず、作業が止まってしまう
- どのような配慮が必要か:仕事を依頼するときに優先順位を伝えてほしい
このように具体的に整理すると、企業側も改善方法を考えやすくなります。
また、自分の困りごとを整理することで、どのような配慮があれば働きやすくなるのかも明確になります。
② 「大丈夫」と言わず、困っていることを言葉にする
困っていることがある場合は、無理に「大丈夫です」と答える必要はありません。
相手に気づいてもらうことを待つだけでは、状況が変わらない可能性があります。
最初から詳しく説明する必要はないため、まずは簡単な言葉で伝えてみましょう。
例えば、次のような伝え方があります。
仕事量が多い場合
「最近、担当する仕事が増えてきており、すべてを同時に進めることが難しくなっています。優先順位を確認させていただけますか?」
作業速度を求められて負担を感じる場合
「正確に作業することを意識していますが、急いで進めるとミスが増えてしまいます。まずは正確さを保ちながら、少しずつ速度を上げていきたいです」
体調面で不安がある場合
「最近、体調が安定しない日があり、今の勤務を続けられるか不安を感じています。一度、勤務について相談させていただけますか?」
大切なのは、相手を責めるのではなく、自分が困っている状況と必要な対応を伝えることです。
③ いつ・誰に・どのように伝えるかを決める
困りごとを整理できても、誰にどのように伝えればよいか分からず、相談をためらうことがあります。
そのような場合は、事前に伝える相手や方法を決めておくと安心です。
例えば、次のように整理してみましょう。
| 確認すること | 具体例 |
|---|---|
| いつ伝えるか | 業務が落ち着いている時間、定期面談 |
| 誰に伝えるか | 直属の上司、人事担当者 |
| どのように伝えるか | 口頭、メール、メモ |
| 何を伝えるか | 困っている状況、希望する配慮 |
上司に直接伝えることが難しい場合は、人事担当者や社内の相談窓口に相談する方法もあります。
また、口頭で説明するのが苦手な人は、事前にメモを作っておくと、自分の考えを整理しやすくなります。
④ 就労定着支援員や支援機関に相談する
自分だけで企業に相談することが難しい場合は、就労定着支援員や就労移行支援事業所など、支援機関に相談することも大切です。



支援員に相談することで、本人の困りごとを整理したり、企業に伝える方法を一緒に考えたりできます。
例えば、次のような相談ができます。
- 仕事量が増えて負担になっている
- 上司には伝えたが、現場の対応が変わらない
- 周囲の目が気になり、配慮を利用しづらい
- 企業に自分の希望をうまく説明できない
- 今の職場で働き続けられるか不安がある
必要に応じて、支援員から企業に電話で状況を伝えたり、企業訪問や面談に同行したりすることもあります。
一人で抱え込まず、第三者の力を借りることも選択肢の一つです。


⑤ 企業と配慮事項を再確認する
配慮事項を伝えているのに改善されない場合は、企業と改めて内容を確認することも大切です。
例えば、次のような点を確認してみましょう。
- 現在の配慮事項が企業内で共有されているか
- 現場の担当者にも必要な情報が伝わっているか
- 実際の業務内容が本人の状態に合っているか
- 仕事量や勤務時間の調整が必要ではないか
- どのような対応をすれば困りごとが改善するのか
配慮事項は、入社時に決めた内容をずっと続ければよいとは限りません。
実際に働き始めてから、新たな困りごとが見つかることもあります。
本人の状態や業務内容に変化があった場合は、必要に応じて配慮事項を見直していきましょう。
支援員は企業との間に入ってどのように調整する?
障害者雇用で働く本人が、企業に直接困りごとを伝えることが難しい場合、支援員が間に入って調整することがあります。
支援員の役割は、本人の希望をそのまま企業に伝えるだけではありません。
本人の気持ちや障害特性を確認しながら、企業側の状況も踏まえ、双方が納得できる方法を一緒に考えることが大切です。
ここでは、私が支援のなかで大切にしている調整方法を紹介します。
① 配慮事項をどこまで職場に共有するか整理する
企業と配慮事項を調整する際は、まず本人の希望を確認します。
障害特性や体調面について、上司には伝えていても、現場で一緒に働く人には詳しく知られたくないという人もいます。
そのため、支援員は本人に確認したうえで、どの情報を誰に伝える必要があるのかを整理します。
例えば、障害名や病歴などの詳しい情報を共有しなくても、「複数の業務を同時に進めることが苦手なため、仕事を依頼する際は優先順位を明確にしてほしい」という業務上必要な情報だけを伝える方法があります。
② 本人が伝えにくい本音を企業側に伝える
本人が企業に直接伝えにくい悩みについて、支援員が間に入って伝えることもあります。
例えば、本人は職場の人間関係を悪くしたくないため、上司や同僚に不満を伝えられずにいる場合があります。
しかし、本人のなかでは負担が大きくなっており、何らかの調整が必要なこともあります。
そのような場合は、本人の了承を得たうえで、企業側に悩みの背景や本音を伝えることがあります。
ただし、本人が「言わないでほしい」と希望している情報を、支援員の判断だけで企業に伝えてはいけません。



どの情報をどこまで共有するのか、事前に本人と確認することが重要です。
本人と職場の人間関係を大切にしながら、必要な情報を適切に伝えることが支援員の役割の一つです。
③ 本人が企業に伝える場面を支援する
本人が自分の言葉で困りごとを伝えられるよう、支援員が事前に企業へ連絡しておく方法もあります。
例えば、企業訪問の前に支援員から担当者へ「今日は業務について本人から相談があります」と伝えておきます。
事前に企業側へ伝えておくことで、本人も相談する心構えができ、企業側も話を聞く準備ができます。
面談当日は、本人が自分の言葉で困っていることや希望を説明します。
支援員は必要に応じて補足したり、本人の説明が難しい部分を整理したりします。
このように、最初から支援員がすべてを代わりに伝えるのではなく、本人が自分の希望を伝えられるように支援することも大切です。
④ 過去の訓練内容や支援経過を企業に共有する
本人の障害特性によっては、仕事の進め方に工夫が必要な場合があります。
例えば、口頭で指示を受けると内容を忘れやすかったり、複数の指示を一度に受けると混乱したりする人がいます。
そのような場合、就労移行支援などでどのような訓練を行い、どのような工夫が効果的だったのかを企業に共有することがあります。
例えば、次のような内容です。
- 口頭指示だけでなく、メモや手順書を活用する
- 複数の作業を一度に依頼せず、一つずつ伝える
- 作業の優先順位を明確にする
- 指示を受けた後に、本人が内容を復唱して確認する
過去の訓練で効果があった方法を職場でも取り入れることで、本人が働きやすくなる可能性があります。
支援員は、本人の得意なことや苦手なことを企業に伝え、実際の業務に活かせるように調整することも大切にしています。
配慮が改善されない場合は?職場に残るか判断するポイント


企業に相談したり、支援員が間に入って調整したりしても、配慮が十分に改善されない場合があります。
そのようなときは、今の職場で働き続けるべきか、別の環境を検討すべきか悩むこともあるでしょう。
大切なのは、すぐに退職を決めるのではなく、改善できる可能性を確認しながら、本人の体調や今後の働き方を考えることです。
まずは本人と企業の双方で改善に取り組む
配慮が十分に行き届いていない場合は、まず本人と企業の双方で改善できることを整理します。
本人側では、困っていることを具体的に伝えられているか、必要な配慮を整理できているかを確認します。
企業側では、配慮事項が現場まで共有されているか、業務量や担当業務が適切かを確認します。
どちらか一方だけに改善を求めるのではなく、双方ができることを考えることが大切です。
必要に応じて支援員も間に入り、本人と企業が話し合える機会をつくります。
1〜2か月程度を目安に改善状況を確認する
職場の配慮を見直した場合は、その後の変化を確認することも重要です。
私が支援のなかで考える一つの目安としては、まず1か月程度、本人と企業の双方で調整に取り組み、その後の状況を確認します。
例えば、次のような点を振り返ります。
- 相談した内容が実際に改善されているか
- 現場の担当者の対応に変化があったか
- 仕事量や業務内容の負担が軽減されたか
- 本人が安心して配慮を利用できるようになったか
- 体調や出勤状況に良い変化が見られるか
2か月程度取り組んでも改善がほとんど見られない場合は、現在の部署や業務内容での調整が難しい可能性もあります。
ただし、1〜2か月という期間は、あくまで支援現場での一つの目安です。体調の悪化や安全に関わる問題がある場合は、期間を待たずに医療機関や支援機関に相談し、必要な対応を検討してください。
改善が難しい場合は部署変更や業務内容の調整を相談する
現在の部署で配慮を受けることが難しい場合でも、会社全体で働き続けられないと決まったわけではありません。
企業によっては、部署変更や担当業務の見直しによって、働きやすさが改善する可能性があります。
例えば、次のような方法が考えられます。
- 複数の業務を担当する部署から、業務内容が明確な部署へ変更する
- マルチタスクが少ない業務に調整する
- 指示を出す担当者を明確にする
- 業務量や勤務時間を見直す
ただし、部署変更などが可能かどうかは、企業の体制や業務内容によって異なります。
本人の希望を整理したうえで、企業や支援員と相談し、実現できる方法を検討しましょう。
退職を考える場合は、次の働き方も具体的に考える
配慮の改善が難しく、本人が退職を希望する場合もあります。
その際に大切なのは、「今の職場を辞めたい」という気持ちだけで終わらせず、退職後の方向性も具体的に考えることです。
例えば、次のような点を整理します。
- 今の職場の何が負担になっているのか
- 次の職場ではどのような配慮が必要なのか
- どのような仕事内容なら無理なく働けそうか
- 転職活動を始める前に体調を整える必要があるか
- 支援機関や転職エージェントを利用するか
今の職場で困っていることを整理できれば、次の職場選びにも活かせます。
また、退職後の行き先が決まっていないことに不安を感じる人もいるため、必要に応じて転職活動や今後の生活について支援員と相談しておくことが大切です。
無理に今の職場に残る必要はありませんが、本人が安心して次の一歩を踏み出せるよう、退職後の見通しも含めて考えていきましょう。
障害者雇用で配慮されないときによくある質問
最後に、障害者雇用で配慮されないと感じたときによくある疑問に回答します。
会社に配慮をお願いしても断られることはありますか?
合理的配慮は、企業に提供が義務付けられていますが、本人が希望するすべての対応が必ず実施されるわけではありません。
障害者雇用促進法では、事業主に過重な負担を及ぼす場合を除き、障害のある労働者の能力を発揮するために必要な合理的配慮を提供することが求められています。
例えば、本人が希望する方法での対応が難しい場合でも、別の方法であれば対応できる可能性があります。
そのため、希望する配慮が難しいと言われた場合は、理由を確認し、ほかにどのような方法が考えられるか話し合うことが大切です。
一方的に断られたと感じる場合は、支援機関や相談窓口に相談することも検討しましょう。
配慮事項は職場の人全員に伝える必要がありますか?
配慮事項を職場の全員に詳しく伝える必要があるとは限りません。
本人のプライバシーを守りながら、業務上必要な情報を適切な範囲で共有することが大切です。
例えば、障害名や病歴を伝えなくても、「残業が難しい」「口頭で複数の指示を受けると混乱しやすい」といった具体的な配慮事項だけを共有する方法があります。
どこまで誰に伝えるかについては、本人の希望を確認したうえで、企業と相談しましょう。
上司に相談しても改善されない場合はどうすればいいですか?
直属の上司に相談しても改善されない場合は、別の相談先を検討しましょう。
例えば、次のような相談先があります。
- 人事担当者や社内の相談窓口
- 就労定着支援事業所
- 就職時に利用した就労移行支援事業所
- 地域障害者職業センター
- ハローワークの専門援助窓口
自分だけで企業に伝えることが難しい場合は、支援機関に相談し、企業との面談に同席してもらう方法もあります。
関連記事:【障害者雇用で相談できる窓口まとめ|一人で悩まないための相談先を支援員が解説】
配慮されない職場は退職した方がいいですか?
配慮されないと感じるからといって、すぐに退職を決める必要はありません。
まずは、困っていることを具体的に整理し、上司や人事担当者、支援員などに相談してみましょう。
業務内容や仕事量の調整、部署変更などによって、状況が改善する可能性もあります。
一方で、相談しても改善が見られず、体調が悪化している場合は、今の職場で働き続けることが適切とは限りません。
無理をして働き続けるのではなく、医療機関や支援機関にも相談しながら、休職や退職、転職などを含めて今後の方向性を考えることが大切です。
まとめ|配慮されないと感じたら、一人で抱え込まず相談しよう
障害者雇用で働いていても、必要な配慮が十分に行き届かず、働きづらさを感じることがあります。
その背景には、企業側の情報共有や引き継ぎが不十分な場合だけでなく、本人が困っていることをうまく伝えられていない場合もあります。
配慮されないと感じたときは、次のことを意識してみましょう。
- 何に困っているのかを具体的に整理する
- 「大丈夫」と言わず、困っていることを言葉にする
- いつ、誰に、どのように伝えるかを考える
- 必要に応じて支援員や支援機関に相談する
- 企業と配慮事項を改めて確認する
また、配慮の改善には、本人だけでなく企業側の情報共有や職場環境の見直しも必要です。
本人が自分の希望を伝え、企業が業務上の事情も踏まえて対応を検討し、必要に応じて支援員が間に入ることで、働きやすい環境に近づけられる可能性があります。
もし、今の職場で配慮されないと感じているなら、一人で抱え込まず、まずは身近な人や支援機関に相談してみてみましょう。
今の職場で改善できることがあるのか、それとも別の環境を考えた方がよいのか、一緒に整理していくことが大切です。
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